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「俺、まだ二十歳になってないんだけどなぁ。」
「そうだね。でもあと三か月くらいじゃない」
「栞だけずりぃよ。俺まだ十代。あ、あれは? それっぽい」
メッセージを送った日から二週間後。今日はその約束、計画実行の日。
昨日の夜、意外と寒い時期になったんだと実感し、パーカーを羽織るべきだったかもと後悔。スマホのライトで足元を照らしながら『いい感じの瓶ないかな』と探し回る。正直、正確な瓶の形状を覚えていなかったので俊貴も記憶が朧気であることを祈ることにした。
十七時半を回って数分後。
やはり安定しない足場をゆたゆたと歩く私たち。昨日仕掛けたはずの場所が近づくにつれ私の鼓動が速まる。
「栞は手紙に何書いたか覚えてる?」
脈が安定しない。主に俊貴のせいで。動揺が足に伝わって躓きそうになるのを必死にこらえる。声も震えそう、全身が震えそう。タイミングよく吹いた風で乱れた前髪を直しながら、心の乱れも直す。
「あんまり、覚えてないかな。お気に入りの便せん使ったのは覚えてる」
『ふうん』とそっけない返事。私は平常を保とうと精一杯なのにと意味のない苛立ちを感じそう。なんとなく俊貴の手紙の内容は聞けなかった。私との熱意の差がはっきりしたら悲しいから。
気づいてほしい、できれば俊貴が。
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