開幕

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 わざわざ予定を合わせ、待ち望んでいた二週間の間ウキウキわかりやすく浮足立っていた自分を殴りたい。痛いからせめて『花畑!』と目の前で叫んでやりたい。  しばらくの沈黙を破ったのは俊貴のほうだった。 「まあ帰るか。仕方ない。綺麗好きなんだよ、きっと最近のこの町の人」  微妙なフォローに小さく返事をして私たちはまたゆたゆたと歩き出した。約三十分だけの海水浴場散歩は終わった。  帰りに『なんか悔しいから』とコンビニに寄り、いつもなら高いという理由で買わないアイスを買った。コンビニの駐車場の端でアイスを食べる私たち。早食いが祟ってこめかみを押さえる俊貴。その姿を鼻で笑うと『人の血が流れていない』と頭を小突かれた。 「残念だったな」 「そうだね」  そんなような会話ばかりしながらのアイスを食べえて、今度こそ帰ろうかという空気になり、私は歩き出そうとした。 「俺の手紙の内容、知りたい?」  振り返ると、意外と真剣な顔をしている俊貴。私は早く帰ってもう二度とこないであろう告白のチャンスと手紙の後悔と恥ずかしさを愛犬に慰めてもらいたい。 「覚えてるの?」 「割と鮮明に」  動き出そうとしない俊貴を急かすように、私は俊貴を置いて再び歩き出す。もう陽が沈みそう。片想いのまま終わるのだと、ノスタルジックな気持ちになる。これがエモいか。二度と感じたくない。  もうなんだか涙が出てきてもおかしくない。でもその涙は愛犬の前で流すことに決めたから、早く家に着いて、そして早く俊貴も歩き出して。
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