閉幕

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閉幕

 五年間の手紙の重さは神様も流石に引いて、私がどうにかならないように瓶を回収してくれたのかも。そう思うことにした。それでいいんだ。  俊貴がどんな内容を書いていたか知らないし、きっと将来の夢とか書いたんじゃないのと当時も今も思っている。『だれだれと付き合えますように』とか可愛い女の子の名前が書かれていたら流石に落ち込むかもしれない。  もういいんだ。ここまできたらもう結ばれない運命なんだ。幼馴染のまま。それでいいんだ。    気持ちのせいか歩調が速くなっている。俊貴はもう遥か後ろに置いて行っているのかも。ごめんなさい。  このまま突っ切りたかったのにタイミング悪く赤信号。ここの信号は青になるまで遅い。車が次々と走り抜けていく。早く家に帰りたいのに、ここまで神様は意地悪なのかと虚しくなる。 「栞への告白。書いたんだよ」  いつの間にか私の前に割り込んできた彼。さっきより真面目な顔で少し息が切れて髪の毛も乱れている。  もう既に青信号に変わっているのに彼の言葉を咀嚼もできずに立ち止まってしまっている。 「告白、ずっと片想いしていたの知らなかったでしょ」  そして赤信号になってまた足止めを食らう私はやっと彼の言葉を飲み込んだ。  もう沈み切っている夕陽とささやかな波の音。  やっぱり神様は意地悪かもしれない。    五年間の計画実行宣言は彼の奇襲により幕を閉じた。
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