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不眠症
「俺さぁ最近不眠症ぽいんだよね」
口元にコーヒーが入った熱々のカップを
運んだ。
苦い、舌全体が縮こまるような苦味だ。
だがその苦味でさえもすぐに消えてしまう程
真っ昼間から眠気が俺を襲う。
「あぁ寝る前にスマホとか見てない?ブルー
ライトとか良くないらしいよ」
俺の高校の同級生である
カツマタがチョコレートパフェを美味しそうに頬張って言った。
「いやスマホも21時以降は触ってないか
ら完璧な不眠症だよ」
今日も30分しか寝てないせいか
目がショボショボする。
「あれ?どうなった俺がお前に上げた睡眠薬
の効果はどう?」
俺はこのカツマタから睡眠薬を貰っていた
何を隠そうこのカツマタも以前はぐっすり眠れないことを悩みにしていた。
そこで病院に行きよく眠れる薬、すなわち
睡眠薬を処方してもらったらしい。
そしてその薬を飲んでいる内に眠りの質が改善し今ではぐっすり眠れているようだ。
余ったその睡眠薬を俺に横流ししてくれている。
本当は病院行かなきゃ駄目なんだろうけど
面倒くさくて
「あっごめんまだ飲んでないや」
俺は面倒臭がりな性格で
薬を夜に飲むのですら3日ももたない。
だからこのカツマタから貰った睡眠薬も
飲むのを忘れていた。
そりゃ改善する訳がない。
「だからだよ。あれマジで効くから飲んで
み」
まるで自分が薬を作ったかのような言い方だがこいつ患者側だろ。
「ただ、気を付けろよ服薬の量間違えると
体にガタが出るらしいぞ」
カツマタが続けざまに注意喚起を述べた。
「体にガタ?具体的には」
「知るかよやった事ねぇし」
「普通聞くだろ」
「なんで普通に服薬するだけなのにデメリッ
トまで聞かねぇといけねぇんだ」
駄目だこいつにはこれ以上話が通じん。
まぁ良い
処方量を間違わなければ済む話だから
気にすることもない。
「おい、一応念の為聞くけど一回の薬の量
何錠か分かってるか」
チョコレートパフェ用の長いスプーンで俺を指しながら聞いてきた。
「あぁわかってるよ」
そう答えたが実際は処方量なんてとっくに
忘れている。
でもネット検索とかすればどうにかなるでしょ
「分かってるならいいけど」
カツマタが後を濁すような言い方をした
コイツ、この薬に対して随分と怖さを感じているんだな。
たかが薬如きに怯えることねぇのに。
仮に処方量間違えたとしても
何も身体に支障は無いだろ。
睡眠薬に対してオドオドする
カツマタの姿に俺は肩を落としながら
店を後にした
前までは頼りになる男として
見てたんだけどな…
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