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夢
ND錠を飲んでから
1時間…
2時間…
3時間
経過してもなお
眠気は襲ってこない。
なんだ結局あの薬は
見掛け倒しだったのか?
それか、ただ単に服薬量が少ないから
効果が出ていないのか?
疑問が絶えず出て思考を混乱させていると
[ピンボーン]
部屋にチャイムの音が鳴り響いた。
時計を見る
23時35分
こんな夜遅くに誰が来たのか?
いやカツマタが来てまた説教まがいの
ことをわざわざ言いに来たのか?
寝室のベッドから立ち上がり
思い足取りで
インターホンのモニターを
覗く
…
…
…!
加藤マリア!
そうそこには加藤マリアが
居る!確実に居る!立っている!
俺は何を隠そう
BOSHというアイドルグループの
センター
加藤マリアの大ファンなのだ!
顔立ちがスラッとしていて
骨格も何一つ無駄な肉が無く
鼻立ちも高いので
外国とのハーフと見られがちだが
神奈川県出身で
ファンからは
神奈川のジャンヌ・ダルクと言われている
その美貌に惹かれた俺は
毎回近くのライブホールの
ライブには行きオタク活動を充実させている
そんな、そんな推しの
加藤マリアが何故俺の家に?
震える手でインターホンの応答ボタンを押す
「あっあの何か用でしょうか?」
頭が真っ白になり語彙力が低下した。
「あなたに会いに来たのよ」
あなた?
しかも会いに来たって?
直接面識はないし
なにより俺の家をなんで知っているんだ?
「あの…人間違えではないですか?」
恐る恐る
マリアさんに聞いてみた。
確実に人間違えだろう
ファンの分際で
推しとプライベートと会える訳が無い。
「あなた、タキザワ ヒトシさんよね?」
自分の名前を呼ばれて
心臓が抉りでるかのような衝撃に
襲われた。
人間違えではない
マリアさんの口から
俺の名前が出ただと…?
これは夢か?
いやいや現実だよな…?
名前を呼ばれた感動に浸っていると
ドンドンッ!
下から大きな衝撃を感じた
その衝撃は何かを突き上げるかのように
下から上へと突き抜けるようなものだった。
やがてその衝撃は
今度横へと揺れていった。
とてもじゃないが立っていられないほどだ
間違いない
地震だ
大地震だ
揺れの衝撃の影響で
足に力が入らなくなり
腰を抜かすように尻餅をついてしまった。
鈍い痛みがおしりから背中にかけて
電流が走る痛みが残った。
倒れている場合ではない
早く机の中に潜らなければ
避難しなければ…
尻餅をついている体制から
四つん這いになり
リビングに置いてある机に向かって
一直線に這いずった
まるでママの元に向かう赤ちゃんのような
心境だ。
這いずっていてもなお、
揺れを大きく感じる。
それどころか揺れは先程より
震度を増している気がする。
それでも少しずつ
少しずつ
少しずつ
テーブルに近づいていく
やっとの思いで
テーブルが目の前に見えた。
その瞬間
揺れは嘘のようにピタッと収まり
外から聞こえた轟音も止んだ。
なんだったんだ
あの地震は…
ともかく
揺れが収まって良かった。
あっ、そういえば
マリアさん大丈夫だろうか?
対応していた時に地震が来たから
もしかしたら怪我をしている可能性が…
インターホンに向かう為
四つん這いから
足と腰に力を入れ
一気に立ち上がった。
立ち上がると
目眩がクラっと感じ
その違和感を境に
目の前の視界が徐々に
暗黒に染まっていく。
どうする事も出来ず
なすがまま
俺はとうとう意識を失った。
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