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「噓でしょ!?どこに行ったの私の宿題っ。」
私は今、ここ最近で最大のピンチを迎えていた。高校の夏休みの宿題がどこを探しても見つからないのである。先日まで優雅に夏休みをエンジョイしていた私だが、それも昨日までのこと。残りの三日をすべて費やし、怒涛のスピードで宿題を終わらしたというのに、先ほど書き上げたはずの読書感想文がどこを探しても見つからないのだ。明日には始業式を迎えてしまうというのに、少し昼寝をしただけで、読書感想文が消えてしまうなんて。
「そんな、こんなことってひどすぎる、ついさっきまでここにあったのに。」
とにかく私はいったん落ち着いてあたりを探してみることにした。机の上をひっかきまわし、地面と一体化して、あたりをめちゃくちゃにしても原稿は見つからない。
「こんなに探してもないなんて。もう三時だし。始業式だけど明日から普通に授業があるのに。どうしよう」
絶望の淵に落とされながらもあるはずもない鞄をあさるとそこからはなぜか、課題図書である本が新品同様で出てきた。
「あれ、どうして本がここにあるの?それにすごくきれいだし鞄の中にしまうなんてそんな変なことをするはずがってあれ?おいおいおい、ちょっと待てよ…」
私は急速に頭の中が冷えていくのを感じた。本の表紙を見ても話の内容が一切思い浮かばなかったのである。
「うそだ、そんなはずがない。だってさっき書いたもの。」
私は自身の記憶をたどった。昼寝をするついさっきまで目から血を流しながら書いて、最後の丸を書いたところまでは覚えている。
「あれ、でもどんなこと書いたっけ?」
しかしいくら記憶を遡っても原稿の内容が出てこない。
「書き上げてから少し寝ようと思って、それで起きたら。あれ、起きた?」
どこかおかしい。書き上げてから寝たわけなのだから、寝ようとして起きるなんてそれはもう。
「私、夢の中で書いたの!?」
信じたくない気持ちでいっぱいだったが、この場に原稿がなく、自身にも感想文に関する記憶がないことからもこれはまごうことなき事実のようだった。
「どうしよう、ごたごたしているうちにもう三時過ぎじゃない。あきらめて寝てしまおうか。いや、だめだ。そんなことしたらただでさえ現代文はテストの結果が悪かったのに、課題出せなきゃ単位貰えない。」
私に残された選択肢なんて一つしかなかった。結局当たり前のようにオールして、死んだような眼をして登校する私が目撃されたとか。皆はきちんと計画的に宿題を終わらせようね。
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