(一)

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 長森渚は埼玉県内のファーストフード店にいた。環状八号線から枝分かれして北上してゆく笹目通りをしばらく行ったところの郊外型のロードサイド店舗だ。モーニングタイムで客入りはまばらだったが、これから仕事に向かうであろう人で、店内の席は半分近くが埋まっていた。  渚は店カウンターで注文したホットコーヒー二つを両手でそれぞれ受け取ると、駐車場への出口へ向かい、ガラスのスライドドアのセンサーを感知させて店を出た。  駐車場に出ると、店舗の建物から最も遠いところに停めてあるシルバーのセダンへまっすぐ歩いて行った。 (続く)
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