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「樹氷の街」の領主を幼い頃より任されている姫さまは、父親であるメルキセドの現国王、アレキウス・マグルガー・メルクリウス陛下とは長らく離れ離れだったのだ。この年齢でたった一人、辺境の地を治める任に就くことがどれ程心細いことだろうか。それを思えば、彼女のその言葉は当然のものだとも言えるだろう。
それにしても、姫さまのお父様である国王陛下とは一体どんな人物なのだろうか。きっと素晴らしい人物なのだろうな。何せこの姫さまの生みの親であらせられるお方だ、うん、そうに違いない。
「リアスはこういう場所で暮らしたい?」
私が彼女の思いを肯定するように微笑んでいると、不意に姫さまが問いかけてくる。突然話題を振られた私は、質問の意図を解し損ねつつも、間髪入れずそれにに答えた。
「私は姫さまのいる場所で暮らしたいです!」
少々食い気味に、暑苦しいくらいの勢いで返事を返すと、姫さまは驚いたように目を丸めた。そして、困ったように笑いながら肩を竦める。
「まったく。あなたっていう人はどうしていつも、そんなに上手なお世辞が言えるのかしらね。たまに驚かされてしまうわ」
「え! 私は別にお世辞を言っているわけでは……」
「はいはい、分かっているわ。いつもありがとう」
姫さまは私の抗弁を遮って柔らかく微笑む。
「でも、それなら早く用事を済ませて、私達の街へ一緒に帰りましょう」
「はい! わかりました!」
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