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落ち着いた振る舞いで、姫さまが衆目の前へと現れる。周囲を回っていた騎馬隊はピタリと静止し、儀典官とそれに従う奉迎の騎士達が、恭しく頭を下げた。
姫さまは、最後の段差を下り終えると、片手でスカートの裾をつまみながら、お辞儀をする。それを合図としたように、再び統制された動作で、騎士団が掲げた剣を鞘へとしまった。
続けて、行事を取り仕切っている初老の儀典官が私たちの元へと近づいてくる。彼の両脇には、その守護を固めるように二人の騎士がついていた。片方は長く伸びた金髪と尖った耳、エメラルド色の瞳を持つエルフの女騎士。そしてもう片方は、カールのかかった赤髭を蓄えた筋骨隆々のドワーフの騎士だ。特別な役目を与えられている辺り、恐らくは皇立騎士団でも一、二の精鋭ということだろう。ということはもしや、彼らが「白銀の大国」の擁する三本の剣、「メルキセド三将」と称えられる英雄だろうか。
……は、いかんいかん。つい、いつもの癖で下世話な詮索を行ってしまった。ここは戦場ではないんだ。あまり無粋な真似をするべきではないだろう。
ひとまず姫さまのことを見て落ち着くとしよう。
「遠路遥々のご足労、大変痛み入ります、殿下」
私たちの前にまでやってきた儀典官が、低頭しながら姫さまに挨拶をした。姫さまの方も小さく頷いて、それに返答する。
「お出迎えご苦労様です、ギルバート」
「いえいえ、とんでもございません。シルフィリディア皇女殿下におかせられましても、此度は十五の誕生日をめでたく迎えられたとのこと。我々も大変喜ばしく思っております」
「ありがとう。式典の準備の方は?」
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