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そんな風にして旅の時間は過ぎ、やがて周囲の景色はだんだんと、活気のある市街地へと移ろい始めた。歓声の入り混じった賑やかな喧騒が私たちの耳にも届いてくる。私たちが乗っている皇家の馬車を歓迎してくれているようだ。
「白銀の大国」は、現在大陸中を取り巻く百年戦争の戦火を免れ続けている数少ない国の一つだ。永世中立国「虹の橋の国」、大陸の東端にある鎖国国家「黄金の国」、反対の西端にある「死と岩の国」、そして不可侵地帯として認定されている「雨雲の国」及び「降り積もる塵芥の国」を除けば、すべての国が、当代の長い戦争に携わっている。気の遠くなるような話だが、これは私や姫さまの生まれる、ずっと以前からのことだ。
だから、戦乱の長引く大陸では、我が国の王都「銀嶺の都」ダイヤモンドパレスのように煌びやかで、争いとは無縁の場所は極めて少ない。雅な街並みと、絢爛な衣装に身を包んだ貴族や上流騎士達の往来とが視界を彩る。その光景は、私のような人間には眩しすぎるようで、なんだか目がチカチカとするような感覚を覚えた。
私が身を置き続けてきた世界と見比べると、危機感がないというか、世間知らずというか、どうにも浮世離れしているように感じる。しかし、それこそがこの国が「平和」である、ということの証左なのかもしれない。得てしてそれは、世の中の本当の「苦味」を知らないからこそ、生まれるものなのだから。
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