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「あれ?ホテル側のミス?レストランで食事するって予約したんだけど」
海斗はドレス姿の私に微笑みを向けゆっくりと近づいてくる。
「俺がルームサービスにしてくれるよう頼んだ。さっ、月海、こちらへ」
普段、スーツ姿とは無縁の海斗が眩しく見える。
付き合って3年も経つのに未だにドキドキさせてくれる。
差し出された手を取り腕を組む。
そう離れていないダイニングテーブルに見事なエスコートで着席する。
「今日の主役は海斗なのに、これじゃ私が主役みたい」
引かれた椅子に腰かけ海斗を見上げると少し緊張した顔をしていた。
「?海斗?どうかしたの?体調でも悪い?海辺の散歩が寒かった?」
「・・・・」
海斗は無言で対面の椅子に座った。
シャンパンで乾杯の予定でいたのに給仕がいないことに気付く。
「あっ、シャンパン開けてもらわないと」
立ち上ろうとすると海斗に制された。
「月海、座って。俺がこのままでいいって頼んだ。一旦、座って」
声も表情も緊張している海斗は初めてだ。
海斗の姿を怪訝に思いながらも言われるまま腰を下した。
「うっ、ゴホン」
海斗が咳払いをする。
「やっぱりっ!喉痛いの?やだっ!ごめんなさいっ!私が夕陽の沈む海辺を散歩したいなんて言ったからっ!」
ガタンッ!
鞄に常備している風邪薬を取りに行こうと立ち上がった。
「月海、大丈夫だ!喉が痛いんじゃない。いいから、座って」
少し語気を強めて海斗が意を決した様に私を見つめる。
視線が少し痛い位に。
「わかった」
ただならぬ海斗の様子に素直に従った。
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