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俺がふと目を覚ました時には、既に外は明るくなっており、遮光カーテンの隙間から明かりが差し込んでいた。
電気が消された薄暗い室内で、二日酔いで頭痛がする頭を軽く摩る。
昨日、俺はどうやって家に帰ったのだろうか。
行きたくもない合コンに行き、抜け出して駅に向かっていた。
そうだ、その時にカンタに出くわしたんだ。
それで話に花が咲いて、俺は飲みすぎて、かなり酔ったんだっけ。
頭痛で起き上がる気もせず、俺は頭を抱えて目を瞑ったまま昨日のことを思い出していた。
記憶がなくなるタイプではないはずなのだが、余程酔っていたのか終わり頃の記憶がはっきりとは思い出せない。
それでも、カンタが用意してくれたタクシーに乗り込み、帰路に着いたことは覚えている。
ただ、そこから先のことはどうしても思い出せなかった。
自分の家を説明した記憶すらも出てこない。
「あ、起きた?」
突然人の声が聞こえ、俺はびっくりして訳も分からないまま声が聞こえた方に目を向けた。
そこには扉から顔を覗かせた、昨夜出会ったカンタがいた。
「えっ?何でいんの?」
「何でいんのって言われても、ここ俺の家だよ?」
おかしそうに笑いながら電気を付けるカンタの言葉に、俺は慌てて周囲を見渡し、自分の家とは全く違う間取りであることに気づく。
それに気づけば自分が寝ているベッドも知らない柄だし、匂いも自分の家のものではないことにやっと気がついた。
「えっ、ごめん。俺昨日何した?もしかして押しかけた?」
帰りの記憶がまるでない俺は体を起こしながら最大限の可能性を考える。
「何もしてないよ。強いて言うなら、タクシーで寝ちゃったから自宅まで送れなかったぐらいだよ。」
「え、ほんとに?ごめん、俺めっちゃ迷惑かけてんじゃん。ここまで俺ちゃんと歩いてきた?」
「起きなかったから、おぶってきた。」
俺はとんでもない失態に項垂れるようにして顔を隠しながらため息をつく。
それにカンタは何が面白いのか、クスクスと笑いをこぼしている。
「マジでごめん。普段こういうことないんだけど。」
「気にしなくていいよ。俺がそうなるように仕向けただけだから。」
「どういう意味?」
何が言いたいのか分からず、顔を上げればカンタはドア枠に体を預けて腕を組み、楽しそうに口角を上げていた。
出会った時はかき上げてセットをしていた髪は下ろされ、大人っぽかった雰囲気も少しは落ち着いてやっと同年代らしく見える。
しかし、それでもすらりとした体型はラフな部屋着をモデルのように着こなしており、変な色気が漂っているように感じ、高身長というだけでこうも違うものなのだろうかと悲しくもある。
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