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「ミキちゃん可愛いんだから、しっかり自分の身は守らないと。変な虫が寄ってくるよ。」
「自分の身ぐらい自分で守れるよ。俺はそんなに弱くない。」
「本当に?じゃあ、俺からも逃げられる?」
そう言ったかと思えば、握られていた手は頭上に上げられ、俺はそのままベッドへと押し倒された。
突然の出来事に俺は抵抗することも出来ず、情けなくも両手を拘束されて動きを封じられてしまった。
「何すんだよっ。離せよっ。」
「自分の身は自分で守れるんじゃなかったの?」
「これは反則だろ。お前は友達だし俺は二日酔いで頭が痛い。条件が悪すぎる。」
「でも、実際こういう状況に陥った時、ミキちゃんが元気だとは限らないよ?むしろ、泥酔状態の時の襲われてもおかしくない。現に俺に酔わされて持ち帰られてるんだから、そのまま襲われててもおかしくないよ?」
俺を見下ろすカンタは顔では笑っているが、その瞳の奥は笑っているようには見えなかった。
おかしな状況に俺は段々不安になってきて体に力が入る。
「俺は男だ。男に襲われるわけないだろ。」
「それ、男に痴漢されたミキちゃんが言う?痴漢にあったことがあるなら、それ以上のことが起こらないとも限らないんじゃない?」
俺の両腕を力強く押さえつけるその手は振りほどけそうになく、仮に元気だとしても逃げられるか怪しいぐらいだった。
俺の知っている、身長が小さくて貧弱だったはずのカンタはもうどこにもおらず、目の前にいるのが体格に見合った力を持った男であることを思い知る。
それに悔しさを感じつつも、何をしようとしているのか分からないカンタに恐怖を感じ、心臓が大きく警笛を鳴らす。
「ごめん、そんなに怖がらないで。冗談だよ冗談。ミキちゃんが無防備だからからかっただけ。」
不安な気持ちが俺の顔に出ていたのか、カンタはあっさりと拘束していた俺の腕を解放して俺の上からどいてくれる。
「やめろよ。こんなの、タチ悪すぎるだろ。」
「ごめんね。ミキちゃんが可愛いから心配で。」
「その可愛いもやめろよ。何回言ったら分かるんだよ。」
「ごめんって。そう怒らないでよ。起きれる?」
「自分で起きれるよ。」
介抱するように手を差し出してくるので、俺はそれを払いながら自力で起き上がる。
戻すほどの二日酔いではないが、それでも頭はそれなりに痛い。
痛みが強くなっているように思うのは、二日酔いのせいなのか、目の前にいるカンタのせいなのか、どちらなのだろうか。
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