57人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういや、服着替えさせてくれたんだな。」
「スーツだったからシワにならないほうがいいと思って。寝にくいだろうし。」
「何から何までごめんな。着替えさせるの大変じゃなかった?」
「そうでもないよ。ボタン外したら自分で脱いでくれたから。ただパンイチで寝ようとしてたから、着せるのはちょっと大変だったけど。」
「本当にごめん。まるで覚えてないわ。カンタはどこで寝たんだ?」
「俺はソファーで。流石に2人じゃ狭いから。」
それに俺は再度項垂れながらため息をつく。
昨夜再会したばかりの旧友に俺はどれだけ迷惑をかけ、醜態を晒したのだろう。
ただただ申し訳なくて合わせる顔がない。
「マジでごめん。もういっそのこと道端に捨てといて欲しかったぐらい迷惑かけてるじゃん。」
「気にしないでよ。言ったでしょ、俺が飲ませたって。むしろごめんね、二日酔いになるまで飲ませて。薬あるから飲みなよ。」
その厚意に感謝しつつ、萌え袖状態のぶかぶかの服を着た俺は案内されるままにリビングに行き、カンタが作ってくれた軽食と共に薬を貰う。
俺だったら、きっとそんな面倒な友達は置き去りにして帰っていただろう。
連れて帰ってくれた挙句、これだけしてくれるカンタは本当に優しいと思う。
ただ、カンタは昔から優しい奴だった。
俺のことを何かと気にかけてくれ、いじめっ子を返り討ちに出来ると知っていながらも、絡まれていたら助けに来てくれていた。
小さかったカンタは助けに来て返り討ちに遭い、俺が逆に助けるというのが定番だった。
返り討ちに遭っても、俺に避けられても、それでも懲りずに俺を助けて俺について回っていた。
話をしていれば、忘れていたそんな昔の話も不思議と鮮明に思い出してくるものである。
あの時、何故カンタはあんなにも俺について回っていたのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!