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「ミキちゃん。」
先にご飯を食べたと言うカンタは手持ち無沙汰なのか、俺の向かいに座って俺が食べる姿を眺めていた。
そんなカンタが徐に名前を呼ぶので、ご飯を口に運びながら返事の代わりにカンタに視線を向ける。
真っ直ぐ俺を見つめているカンタと目が合った。
「俺と付き合わない?」
「ゲホッ、」
あまりに唐突な言葉に俺はのどを詰まらせかけて咳き込む。
「大丈夫?」
「お前、何訳わかんないこと言ってんだよ。俺たち男同士だぞ。」
「うん、知ってる。でも俺は本気だよ。ミキちゃんが好き。昔からずっと。」
「はぁ?お前、そっち系だったの?」
「多分違うと思うけど、分からない。ミキちゃん以外に好きになったことがないから。」
「分からないって、今までに彼女ぐらいいたんじゃないの?」
「いたことないよ。ミキちゃん以外に興味ないもん。」
「でも童貞ではないだろ?」
「誰ともしたことないよ。言ってるでしょ、興味ないって。」
真っ直ぐな瞳を細め、片肘で頬杖をついて笑みを浮かべるカンタは、嘘をついているようには見えない。
それに男であるならばそんな嘘をつくはずがない。
童貞は処女のように守り抜くものではなく、捨てるものというのが一般的な認識だ。
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