第一話 あの日の約束

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「あの時から、ずっと?あんなの子供の戯言だろ?」 「思い出してくれた?あの時の俺の言葉に嘘はなかったよ。ずっと、本気でミキちゃんが好き。だから、俺は意地でもミキちゃんを持ち帰りたくて、お酒を飲ませた。強くないことを先に教えてくれたから。少しでも関係を深めたかった。このチャンスを逃したら、もう一生会えない気がしたから。神様が与えてくれた最初で最後のチャンスだと思ったから。」 あの時、カンタは何かの運命だから飲みに行こうと言った。 大袈裟な表現をする奴だなと少し引っかかってはいた。 しかし、カンタからすれば本当に運命の出会いだったのだろう。 中学を別になった俺らは疎遠になり、連絡先すらも交換していなかった。 小学校の同窓会などまずないし、俺たちが会うには共通の友人を伝っていくしかないが、携帯が変わっていく中でほぼ消えてしまっている。 あんな形で出会ったのは、本当に奇跡に近い。 「ねぇミキちゃん。俺じゃダメかな?俺は絶対ミキちゃんを大切にする。結婚は出来ないけど、絶対幸せにするから。俺と付き合ってくれない?」 「いや、そんなこと言われても……俺たち、男同士だぞ。俺は男を好きになったことはない。」 「無理に好きにならなくてもいいよ。恋人らしいことをしなくてもいい。ただ一緒にいてくれたらそれでいい。むしろ会ってくれるだけで構わない。ミキちゃんに好きな人が出来たら、止めたりもしない。咎めもしない。ただ、その後も俺と遊んで欲しい。友達としてでいいから。それ以外は望まないから。」 「それ、付き合うって言うのか?」 「言わないかもね。でも、ミキちゃんが傍にいてくれるなら俺は何でもいいんだよ。俺はミキちゃんとの繋がりがほしい。何かあったときに助けてあげられる距離感でいたい。」 カンタは俺の手を握りながら伏し目がちに切々と語っていた。 そんなカンタが捨てられた子犬のようにも見え、どこか可愛く見えるのは母性みたいなものだろうか。 別に、カンタのことは嫌いではない。 むしろ、昨日の飲みで気が合うことはよく分かったので、好きな部類ではある。 ただ、それに恋愛を絡めて考えることは難しい。 俺は男を好きになった経験はないし、そんなことを考えたことすらない。 それならば断ればいいと頭では分かっていても、男だからという理由だけで断るのがどうにも申し訳なく思うのはなぜだろうか。 考えなくても、答えは見えているはずなのに。
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