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「三城、終わりそうか?」
PCに向かう俺に、同僚の高橋が声をかけてきた。
「もうちょっとで終わるよ。そういうお前も終わるのか?」
「俺も後ちょっと。分かってるだろ?今日のあれに間に合わないなんてことは許されないからな。」
「分かってるって。だから頑張ってるだろ。お前も無駄口叩いてないで早くやれよ。」
「冷たい言い方だな。」
「俺は別に行きたくて行くわけじゃないからな。お前がしつこいから仕方なくだよ。」
「だって三城が来ると参加率いいから。今日の礼はまた別でするからさ。」
そう言いながら自分の席へと帰っていく高橋に、俺はひらひらと手を振って適当に返事を返す。
今日のあれとは、合コンのことである。
高橋が狙っている女の子がいる部署との合コンをセッティング出来たらしく、絶対にその話を流したくなかった高橋は、俺が参加することをエサに人を集めたらしい。
というのも、俺はこの会社の中では顔がいい方らしく、俺が行くというだけで女の子の食いつきが変わるらしい。
俺自身にその自覚はないが、どちらかといえば中世的な顔をしており、ミキという苗字のせいもあって昔から女の子に間違われやすかった俺は、一目置かれる様な存在ではあった。
だから学生時代には同級生の女の子には可愛いと言われ、メイクをされたり、セーラー服を着させられたりとオモチャのように扱われていた。
そんな経験もあって女の子が少し苦手な俺は、合コンのような席にはあまり参加をしないし、今まで彼女がいなかったわけではないが、現在は彼女を作る気すらない状態だ。
宝の持ち腐れだとよく言われるが、この顔をどう扱おうが俺の自由だ。余計なお世話である。
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