第一話 あの日の約束

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予定時間までには何とか仕事を切り上げ、俺は合コンの参加メンバーと共に会場となる店へと向かった。 オシャレで少し高めのそのお店を見て、高橋の気合の入れ方を何となく察する。 高橋が狙っているという女の子がいるのは総務部だが、そこは可愛い子揃いで他の参加メンバーも乗り気である。 仕方なくついてきたというのはきっと俺だけだろう。 それでも相手に嫌な気をさせては他の奴等にも申し訳ないので、適当に話を合わせて場を白けさせないようには努めたし、事前にどいつが誰狙いかというのは聞いていたので、そいつに話を流して俺は橋渡しのようにしてその場をやり過ごした。 いい具合に酒も入れば、二次会へと行く流れになったので俺はそのタイミングで逃げようとしたが、高橋がそれを許すはずもなく、俺は渋々付き合うことになった。 今回の合コンはかなり順調に進んでいるようで、それぞれいい感じの雰囲気になりつつある。 俺もそれに付き合っていたが、カラオケで皆が盛り上がっている隙にトイレを装って逃げ出した。 見ている限りでは俺がいなくともうまく事は運ぶだろうし、誰狙いでもない俺からすればこれ以上付き合う理由もない。 元々酒に強いほうではない俺は、帰るのがしんどくなる前に解散したいし、タクシー代も勿体無いので終電がなくなる前には帰りたい。 そんな思いから妥当な代金を高橋の鞄に忍ばせ、カラオケ店から少し離れたところでメッセージを入れておいた。 遅くても会計をする頃には俺がいないことに気づき、携帯ぐらいは見てくれるだろう。
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