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酔いで少し眠気を感じつつ、駅の方へと歩いていると、俯き加減だった俺は前方からの人に気づかず肩を軽くぶつけた。
「あ、すみません。」
そう言って顔を上げれば、相手は俺と同じサラリーマンのようでスーツを着いた。
ただ身長がとても高く、180を超えていそうな高身長に、平均的な俺は少し見上げなければならなかった。
足が長く、すらりとした体型はモデルのように綺麗で、見上げた顔は少し長めの黒髪をかき上げるようにして整え、見下ろすようにした流し目は落ち着いた大人の男性のように見えた。
「ミキちゃん?」
「え?」
しかしそんな見た目とは裏腹に、柔らかな口調でまるで女の子を呼ぶようにちゃん付けで呼ばれ、俺の口からは素直に疑問符が出る。
自分の苗字がたまたま三城なのでややこしいが、誰かと勘違いでもしているのだろうか。
「ミキちゃんだよね?うわ、久しぶり。こんなところで会うなんて。」
相手は完全に思い込んでいるのか勝手に盛り上がり始める。
だが俺の知り合いにこんなにでかい男はいない。
「あの、人違いだと思いますけど。俺、男ですし。」
「え?知ってるけど?ごめん、俺ミキちゃんと飲み直すからまた今度にしようよ。」
「分かったよ。またな~。」
そう言ってその人は勝手に決めつけ、一緒に飲んでいたであろう人と別れを告げた。
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