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エピソード20
◆メモ的つぶやき◆
おそらく、近代以降の日本文学者において、もっとも深い文学的資質を持っていたのは芥川であろうと思う。その直観・思想化・内在化において、芥川を超える可能性を持った文学者を私は知らない。あえていうなら、有島武郎であろうか。この二人を超える者を私は思いつかない。
なぜ、日本において、西欧のような長大で壮大な文学が育たなかったのかと考え始めたところから、たどり着いたいったんの結論である。
芥川の残した大方の小説は大衆小説である。にもかかわらず、なぜそう言えるのか。
たとえば、ヴィクトル・ユーゴーやドストエフスキーを真に理解し、内在的に葛藤し、格闘しえたのは、芥川のみだと思うからである。
最晩年の、多くは遺稿となった作品たち。
あるいはアフォリズムといわれるもの。
芥川は、きわめて詩的で端的な文章でしか残しえていないが、それを読めば、彼がユーゴーやドストエフスキーらを真に理解していたことは見てとれる。
おそらく、その能力を持った者は、ほかにはいなかった。
もしも、といっても詮無いが、芥川にもう少し、精神的・肉体的体力があったなら、ドストエフスキーに匹敵する作品が書けたかもしれない。
その可能性を感じるのは、芥川以外にない。
『歯車』の短い章を膨らませ展開する余力があったとしたなら、おそらく書きえたであろう。
そのように私は理解している。
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