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「そうね、だけど、断続的に続いてくもののたとえでもあるの」 「へえ……」 「人生も同じ。何かあるでしょ? いつか何かが終わって穏やかな日になる。そしてまた何かある。関係ないと思ったことも、いつかの過去とどこかの未来につながっているの。 なんでもない穏やかな日は、雨に磨かれた空気で輝いているのかも。だからね、なにかひとつで終わることはないの。終わったと思っても続いてる。 そしてね、音にはにごりもある。にごりもあって美しい音が出来てるの。ピアノとおんなじね」 「にごりかあ」 「茉莉ちゃんはね、わたしのさみだれ人生に降ってきた、ダイヤモンドよ。キラキラよ」 「もう、おばあちゃんたら」そういいながら、祖母のまっすぐな愛情表現に茉莉はふふっと笑った。 「あら。本当よ」祖母は大まじめに茉莉の目をのぞきこんだ。 「じゃあ、約束どおり、ピアニストにならなきゃね」と、茉莉が言うと、祖母は首を傾げた。 「ピアニストになるのが約束?」 「子供の頃、私の代わりにピアニストになってね、っておばあちゃんが」 「まあ。それでピアニストになろうと思ってくれたの?」 「それだけじゃないけど……。覚えてないの?」 「うん」
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