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出会い
右京に出会ったのはバイト先の居酒屋。右京がバイトしていたところに、私が後からバイトで入った。
店長が一番に右京を呼んだ。
「今日からバイトの女の子ね」
「守屋右京です」
右京はスタイルも良くて背が高く、そしていわゆる塩顔系のイケメンだった。そして少し高めの優しい声。
大学入りたてでバイトも初めて。今まで男性と付き合ったこともない私は、右京を見て素敵な人だと素直に思った。くだらないことでギャーギャー騒いでいた高校の男子達が、まるで別世界の生き物に見えるくらい衝撃的な出会いだった。
「吉岡千晴です。よろしくお願いします」
「よろしく」
爽やかに笑い、軽くボディータッチ。免疫のない私は、たったそれだけのことでときめいた。
「千晴ちゃん、かわいい名前だね」
「そ、そんなことないです!」
ただただ恥ずかしくて下を向いた。
「あれ、耳赤いね。照れちゃった?」
顔を覗き込まれて、軽く笑われた。からかわれているのかな……。
「守屋さんこそ『右京』って名前珍しいですね」
なんとか会話にもっていこうと、ない知恵を絞って話を振った。
「右京って言ったら、相棒の杉下右京でしょ。よくみんなに、家でも紅茶はあんな高いところから入れるのかって言われてさ。そんなわけないじゃん」
そう言って杉下右京の真似をして、高い所から紅茶を注ぐ格好をした。その動作がおかしくて、つい笑っちゃったんだけど、
「良かった。笑った方がやっぱりかわいい」
そう言って仕事に戻っていった。私は突然のことで、何が何だか分からなかった。とにかく右京は初めて会った時からこんな感じだった。
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