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今思えば、もっと警戒するべきだったのかなと思う。でも、右京のような人に今まで会ったことがなくて、ちょっとした仕草や立ち振る舞いも全てがかっこよく見えた。
お客さんに難癖つけられた時も、動揺する私の肩を叩き、サッと私の前に出て、
「申し訳ございません。すぐ新しいものと交換いたします」
と、フォローしてくれた。私は知らない人から責め立てられて怖くて泣きそうだった。
「ありがとうございました」
涙声でそう言うと右京は、頭をポンポンしてくれて、
「お礼に、仕事終わったらジュース奢ってもらおうかな」
と、笑顔をくれた。
仕事終わりに右京に、
「さっきはありがとうございました。ジュース奢ります」
と、話しかけた。
「ジョークだったんだけど、じゃあお言葉に甘えようかな」
二人で近くの自販機に向かって歩いた。隣でいろいろ話しかけてくれる優しい声にうっとりしながら、歩くたび微かに触れる手にドキドキしていた。すると、右京は何も言わずにそっと手を繋いでくれた。あまりにも自然で、何の違和感もなく私も手を握り返した。至福の時だった。
「千晴」
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