出会い

3/3

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 何の前触れもなく、急に呼び捨てとかあり得ないって思っていたけど、その時は手を繋いで歩いていることに舞い上がっていた私は、甘い声で自分の名前を呼ばれて、胸の高鳴りを隠せないでいた。 「守屋さん……」 「右京って呼んで」 「右京……さん」 「ふふ、右京だよ」  こんなやり取り、少女漫画だけだと思っていた。  自販機で缶コーヒーを買って、右京はゴクゴクと飲んだ。喉仏が上下するその様子ですらたまらなく色っぽい。 「ん、飲む?」  そう言って飲みかけの缶コーヒーを私に差し出した。  初めて飲むブラックコーヒーは、ただ苦くて一口で終わった。右京は「子供だね」と意味ありげに笑い、残りのコーヒーを飲み干した。間接キスという言葉が脳裏を横切り、口元ばかり気になった。 「コーヒーごちそうさま」  私が照れていると、右京はいつも「かわいいね」と言って甘い笑顔をくれた。 「缶コーヒーはあんまり美味しくないよね。今度一緒にスタバ行こうか」  さりげなくスマートにデートの約束もできちゃう。右京は本当に絵に描いたような素敵な人だった。右京の沼にハマるまでそう時間もかからなかった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加