派遣先でこき使われる

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「アロイくーん、擦りむいちゃった! ちょっと見てー!」  毛先が奇麗に巻かれたブロンドの髪をかき上げながら、コーレルが甘えた声でアロイのもとへ駆け寄って細い腕を見せた。 「あ、はい」  アロイの柔らかかった表情は硬さを持ち、口角だけを上げた作り笑顔になる。  彼女の腕に指一本触れずさっと治癒魔法をかけて、「ではあちらも見てきます」とアロイは他の魔弾士たちのところへ行ってしまった。  アロイは女性に触れられるのを苦手としていて、近づかれるとさっと避けて行ってしまう。  ゼリエラとアロイは二年以上の付き合いになる、ギルド『ウィスコール』に所属するギルド員だ。  ウィスコールは案件に応じて人材を派遣するギルドで、魔力を持っているが魔法を使えない者も多いこの国では魔法を使える人材の需要が高い。  今回はハンターギルド『ベルロア』から、果樹園を荒らす獣駆除のため補佐する人員を送ってほしいと依頼があって、ベルロアの彼らに同行して来た。  ベルロアはリーダーを含めて男が二人、女が三人。  この任務のリーダーであるルバーノは、連れてきた女たちと濃厚なスキンシップを繰り返す無節操な男。その女たちは奇麗な顔立ちで、コーレル以外は研修中の新人だと聞かされた。  簡単な任務にしては人員過剰だと思っていたら、研修中の新人を連れてきているということで彼女たちの支援も仕事に含まれるらしい。新人の二人は、銃を撃つ素振りだけで実際に撃っていなかった。そのレベルから研修なのかと思うと驚きを隠せない。  しかし、ルバーノは彼女たちを指導する気がないのか、何の指示もせず自由にさせている。どう見てもルバーノが好みの女を連れてきているとしか思えなかった。
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