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「カニエラ。あんたの対応が遅いからルバーノたちが怪我したでしょ! 適当な仕事なんかして、ウィスコールに報告させてもらうからね!」
きつい口調で声高に指摘するコーレルは、小さなミス一つ許さない人のようである――アロイを除く――。自己紹介の時から彼女はアロイをとても気に入っているようで、彼女の怒りの矛先が向くのはアロイの隣にいるゼリエラだった。
「すいませえん……」
怒っているようなのでゼリエラだと訂正せず、素直に謝っておいた。
何故か魔導士は何でもできると思っているようで、コーレルは怪我人が出たのもゼリエラに責があると考えている。
魔導士の腕がどんなに良くても頭は一つしかなく、同時にたくさんの魔法を処理できるわけではない。できる人もいるらしいがそれは天才ってやつだ。
「大丈夫ですよゼリエラさん。アロイさんが治療してくれたので何ともありません」
横から口を挟んだのはベルロア所属のもう一人の男、イリアムだ。
短く整えた黒髪に、濃緑と黒のハンタージャケットを着こなした清潔感のある身なり。彼は爽やかな笑みを見せ、こちらに寄り添った穏やかな言葉で警戒心を解く。ベルロアの中で一番丁寧に対応してくれる一番まともな人でもあった。
イリアムがゼリエラをフォローして面白くないのか、コーレルは口を尖らせる。
「もー、イリアム甘いんじゃないの? 雇ってるんだからその分働いてもらわないと」
「まあまあ。あの魔法生物は狼系フォロルのようですから、ひとまずベルロアに報告を入れてきます。園内の荒らされたところを先に片付けておいていただけますか」
「――だって。カニエラ分かった!?」
コーレルは言われたことをゼリエラに丸投げするつもりらしい。
「はあ〜い、すぐおかたづけしてきまあすっ」
彼女の近くにいると余計な仕事を増やされると感じたゼリエラは、笑顔を貼り付けて素早くその場を後にした。
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