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あなたの行動ひとつで、この学校の品位が下がり、家格が下がり、世間からは「問題を起こした家」として色眼鏡で見られ、それはぜんぶ今のあなたが気軽におこなった「窓の下に石を落とす」という行為によって引き起こされる未来のひとつ。
伯爵令嬢だと居丈高に言うのであれば、家に泥を塗るような真似はするべきではない。
見られる立場であることを自覚し、恥じない行動を取れ。お天道様は見ているのだ。
喋り倒したあと、一息ついたタイミングで鐘が鳴った。そろそろ退校しなさいという合図だ。
すっかり気圧された感のあるアザリアだが、この程度でへこたれるようなタマではないことはわかっている。でも言わないよりマシ。
「今回たまたま大事には至りませんでしたが、あなたの行動ひとつで物理的にも社会的にもひとが死ぬことを心に刻んでおいてくださいませ」
私は彼女たちに背を向け、教室を出る。
おっと、別れの挨拶を忘れていた。お嬢様学校の規律は厳しいのだ。教師に見つかったら「きちんとご挨拶を」と言われてしまう。お嬢様も楽じゃないね。
「ではお二方。ご安全に」
にっこり笑ってそう告げて、私は教室を後にした。
ごきげんよう、じゃん。
別れの挨拶を間違えたことに気づいたけど、まあ間違ってはないからいいか。
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