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良子は小太郎の恋人だ。
ここパリで知り合い、一緒に暮らしている。
だが、一緒に暮らしている、と言っても、良子がここにいる時だけだ。彼女は多忙で、世界中どこへでも仕事に行く。
だが、行先をあまり教えてくれることはない。何の仕事をしているかも、しばらくの沈黙の後「…警察の手助け…」と、よく分からないことを言われて、ごまかされた。
彼女はあまり仕事の話をしたくないようだったし、警察がらみだと、仕事の内容をあまり詳しくは言えないのかもしれない。
想像はしてみたが、本人を問い詰めることはやめた。
そんなことをすれば、彼女がここからいなくなってしまう。そんな気がしたからだ。
秘密を抱えている人だと思った。
僕に見せているのは、彼女のほんの一部かもしれない。そう思った。
初めて涙を見せた時、泣いた理由も教えてくれなかった。
でも、それでもよかった。
彼女が普通でないことくらい、会ったその日に分かっていたことだ。
それでも自分に寄りかかってほしい。ここにいて欲しい、と願ったのは小太郎だ。彼女はそれに答えてくれて、ここに帰ってきてくれる。必ず。
だけど、会えない日が続くと、不安になる。
もう、戻って来ないかもしれない。
だから、チャンスを欲してしまった。
彼女を繋ぎとめるチャンスを。
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