バースデーケーキ  理想的な家族10ー小太郎

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 良子と家族になりたい。  彼女の困ったような笑顔を見れば、難しいことなのだろうと、想像はついた。だけど、なぜ彼女があきらめなければいけないのか。 小太郎は納得がいかなかった。 「どうして、あきらめる?」 「あ?」 「どうして、あんたもりょうちゃんも、無理だって決めつけるんだよ。世界が違うから?巻き込んじゃいけないから?だからなに?何様だよ!僕の世界を勝手に決めるな!」  涙と鼻水まで出てきた。それでもカイトを睨みつけていると、カイトは呆れたように言った。 「お前何歳だよ。泣いてんじゃねぇよ、でかい図体して。そんなんでリョーコと子どもを守れるのかよ」 「いい格好してたって、守れないだろ、僕は」  カイトなら強いし、格好よく守れるのかもしれない。だが、小太郎は無理だ。そもそも二十四歳にもなって、まだ見習いなんて、お笑い種だ。  でも、良子は僕じゃないと守れない。  ぐちゃぐちゃになって、しがみついても、僕しか守れない。 「言うじゃねぇか」  カイトは口を歪めて笑った。 「子どもを産むのなら、選択肢は二つだ。生まれた子どもは然るべきところに預ける。お前たちとの縁は切れるが、その子がきちんと教育を受け、立派に成長できる環境なのは、保証する。そうすれば子どもにもお前にも危険は及ばない。もうひとつは、お前が直ちに日本に帰り、俺が用意した家で子どもを育てる。そうなったら、悪いがお前は日本以外で暮らすことは出来ない。勝手に引っ越すこともできないし、引っ越せと命令が下ったら、すぐに引っ越してもらう。リョーコはたまにしか戻れないだろう。それでも、危険ではないとは言い切れない。大きくなった娘の死体を拝むことになるかもしれない」 「女の子なの?」  カイトがポロリとこぼした情報に、小太郎がすぐに反応し、カイトは「チッ」と舌打ちした。 「どうする?」  聞かれて、小太郎ははっきりと答えた。 「決まってる」
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