3人が本棚に入れています
本棚に追加
良子と家族になりたい。
彼女の困ったような笑顔を見れば、難しいことなのだろうと、想像はついた。だけど、なぜ彼女があきらめなければいけないのか。
小太郎は納得がいかなかった。
「どうして、あきらめる?」
「あ?」
「どうして、あんたもりょうちゃんも、無理だって決めつけるんだよ。世界が違うから?巻き込んじゃいけないから?だからなに?何様だよ!僕の世界を勝手に決めるな!」
涙と鼻水まで出てきた。それでもカイトを睨みつけていると、カイトは呆れたように言った。
「お前何歳だよ。泣いてんじゃねぇよ、でかい図体して。そんなんでリョーコと子どもを守れるのかよ」
「いい格好してたって、守れないだろ、僕は」
カイトなら強いし、格好よく守れるのかもしれない。だが、小太郎は無理だ。そもそも二十四歳にもなって、まだ見習いなんて、お笑い種だ。
でも、良子は僕じゃないと守れない。
ぐちゃぐちゃになって、しがみついても、僕しか守れない。
「言うじゃねぇか」
カイトは口を歪めて笑った。
「子どもを産むのなら、選択肢は二つだ。生まれた子どもは然るべきところに預ける。お前たちとの縁は切れるが、その子がきちんと教育を受け、立派に成長できる環境なのは、保証する。そうすれば子どもにもお前にも危険は及ばない。もうひとつは、お前が直ちに日本に帰り、俺が用意した家で子どもを育てる。そうなったら、悪いがお前は日本以外で暮らすことは出来ない。勝手に引っ越すこともできないし、引っ越せと命令が下ったら、すぐに引っ越してもらう。リョーコはたまにしか戻れないだろう。それでも、危険ではないとは言い切れない。大きくなった娘の死体を拝むことになるかもしれない」
「女の子なの?」
カイトがポロリとこぼした情報に、小太郎がすぐに反応し、カイトは「チッ」と舌打ちした。
「どうする?」
聞かれて、小太郎ははっきりと答えた。
「決まってる」
最初のコメントを投稿しよう!