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小太郎はもちろん、日本で子どもを育てる方を選択した。そもそも選択したのではない。決まっていた。この子が宿ったその日から。
「だいたいりょうちゃんだって、そのつもりだったんでしょ」
あの日、小太郎が避妊をしなかったのを、良子は知っていて受け入れた。ピルを飲んでいたわけでもない。
どこか他に預ける子どもの為に、そんなリスクは冒さない。まさかその一回でできるとは思わなかったが、子どもが欲しいと二人が思ったのだ。自分たちの家族として。
フフフと良子は笑った。
「小太郎に出会えてよかった。わたしの望みを叶えてくれるの、小太郎だけだもん」
そんなことを言う良子は、本当にズルいと思う。なんでも叶えてあげようと思ってしまう。
「とりあえず、十年後に殺されないことが目標かな」
「え?なに?」
ぼそりと呟いた小太郎の独り言に、赤ん坊の寝顔を見ていた良子が顔を上げた。
「いや、何でもない、こっちの話」
小太郎が首を横に振ると、良子は「え、何よ」と食い下がろうとする。
「あ、そう言えば」
こっちの話で思い出したもう一つの事実を、小太郎は良子にぶつけた。
「りょうちゃん、まだ十九歳だったの⁉」
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