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カイトは「ここに行け」と良子がいる病院の場所を記したメモを小太郎に渡し、去って行こうとした。
メモを握りしめ、小太郎はカイトの後ろ姿を見ながら、たまらず「ねぇ」と呼びかけた。
自分がこんなことを訊くべきじゃないと分かっていたが、どうしても訊きたかった。
「カイト、りょうちゃんに、気持ちを伝えたことないの?」
良子はカイトのことを大切に思っている。それが恋情ではないとしても、その想いはひょっとしたら、小太郎に対するものよりも上かもしれない。
振り返った彼は、思いっきり顔をしかめていた。
「馬鹿か。お前みたいな低俗な感情と一緒にすんな」
そうして身を翻そうとしたが、思い直したのか、また小太郎に近づいて来た。
「お前、リョーコの歳、知ってるか?」
「当たり前だろ。僕より二つ下だから、今二十二だよ」
出会った当初は年上だと思っていた。それくらい大人っぽかった。綺麗な人だと思って、恋に落ちたわけだが、恋人になって初めて、実は年下だと知った。もちろん、それで問題が起ったわけではなく、年下だと知った途端、意外に可愛らしいところがあると発見したくらいだ。
カイトはニヤリと笑った。
「やっぱり、嘘つかれてたな。あいつ、今十九だぞ」
「え?」
「日本じゃ、まだ未成年だっけ?」
「えーーー」
混乱している小太郎に、カイトは「じゃあな」と笑いながら去って行った。
カイトが腹いせに嫌がらせをしたんだろうとは思ったが、本当のことを言ったのだろうということは、疑わなかった。
良子が隠していた秘密の一つだ。
確かに知っていたら、小太郎は躊躇していたかもしれない。
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