バースデーケーキ  理想的な家族10ー小太郎

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 カイトは「ここに行け」と良子がいる病院の場所を記したメモを小太郎に渡し、去って行こうとした。  メモを握りしめ、小太郎はカイトの後ろ姿を見ながら、たまらず「ねぇ」と呼びかけた。  自分がこんなことを訊くべきじゃないと分かっていたが、どうしても訊きたかった。 「カイト、りょうちゃんに、気持ちを伝えたことないの?」  良子はカイトのことを大切に思っている。それが恋情ではないとしても、その想いはひょっとしたら、小太郎に対するものよりも上かもしれない。  振り返った彼は、思いっきり顔をしかめていた。 「馬鹿か。お前みたいな低俗な感情と一緒にすんな」  そうして身を翻そうとしたが、思い直したのか、また小太郎に近づいて来た。 「お前、リョーコの歳、知ってるか?」 「当たり前だろ。僕より二つ下だから、今二十二だよ」  出会った当初は年上だと思っていた。それくらい大人っぽかった。綺麗な人だと思って、恋に落ちたわけだが、恋人になって初めて、実は年下だと知った。もちろん、それで問題が起ったわけではなく、年下だと知った途端、意外に可愛らしいところがあると発見したくらいだ。  カイトはニヤリと笑った。 「やっぱり、嘘つかれてたな。あいつ、今十九だぞ」 「え?」 「日本じゃ、まだ未成年だっけ?」 「えーーー」  混乱している小太郎に、カイトは「じゃあな」と笑いながら去って行った。  カイトが腹いせに嫌がらせをしたんだろうとは思ったが、本当のことを言ったのだろうということは、疑わなかった。  良子が隠していた秘密の一つだ。  確かに知っていたら、小太郎は躊躇していたかもしれない。
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