023:ハンターとの交流

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023:ハンターとの交流

 ハンターのお仕事ってかなり大変かもしれいない。一日狩りをして一日分の宿代しか稼げないのでは。休み無しで働けと?  いやいや。それはいくら何でも。  ない、よな?  何か秘訣があるのかもしれない。  酒場を兼任している食堂で、しばらく難しい顔をして悩んでいたら隣の席に禿頭の男が座った。斜め前の席にも男が座った。かなりのイケメンだ。ちなみに正面にはハルが居る。 「よぉ兄弟。どうした難しい顔をして?」  禿頭の男がそんな感じで話しかけてきた。俺は顔を横に向けて「こんばんは」と挨拶。すると斜め前のイケメンも挨拶。 「えぇ、こんばんは」  すると禿頭の男。 「あっはっは。おう。こんばんはぁ。ふは! 挨拶は基本だよな!」  そう言って笑っている。何か俺。面白いこと言ったかな?  不思議に思っていると、イケメンが言った。 「ハンターにしては礼儀正しいですね。珍しい」  なるほど。俺の返事が可笑しかったのか。苦笑い。常識が分からないから、どうしてもそうなるのだ。さて困った。 「あっはっは。また難しい顔をしている。どうした?」 「あ~。はい。その……」 「狩りが上手く行かんかったか?」 「まぁそうですね」  すると禿頭の男。 「まぁ飲め。そっちのお嬢ちゃんはどうする?」  するとハル。 「子供じゃありません! 大人です!」  いきなり主張から入った。するとイケメンが笑った。 「あっはっは。そうですか。じゃあ果実酒なんてどうです?」 「はい。それで」  ハルがイケメンと話し始めた。禿頭の男も自己紹介。 「俺はラーダと言う」 「俺は加瀬です。あっちのはハル」 「カセとハルか。よろしくな」 「はい。よろしくお願いします」 「それで? どうした? さっきも言ったが何やら難しい顔をしていただろう?」 「あ~、えぇ、まぁ……」  そう言って言葉を濁す。正直に打ち明けて良いものか迷ったからだ。するとラーダ。 「話してしまえ。楽になるかもしれんぞ?」 「はぁ、じゃあ、まぁ」  頷いて、話す。経済的に厳しいという旨を。するとラーダ。 「あっはっは。なるほどな。ゴブリン3体とツノウサギが3羽か。まぁ一日の成果としては、それだと確かに厳しいかもな」 「何か狩りの秘訣とかあるんですかね?」  するとラーダが真顔になった。それで俺は黙る。なにか拙いことを聞いたかな?  しかしラーダは少し考えて言った。 「それなら大物を狙えばいい」 「大物?」 「そうだ。換金率の良いのをな」 「えっと?」 「この森だと、最低ラインは熊だな」  話を聞いていたのだろう。ハルが割って入った。 「熊! 居るんですか? 狩りたい。狩りたいです!」  するとラーダが笑う。 「あっはっは。豪気なお嬢ちゃんだ」  するとハル。 「ハルです!」と主張。するとラーダが、また笑う。 「あぁ。そうだったな。すまん。それでハルは熊が狩りたいのか?」 「大物はやっぱり夢ですから!」 「うん。いいな。お前さん。その心意気。根っからのハンターだな!」 「はい!」  そんな会話を交わし始めた。大物をか。するとラーダがまた笑う。 「あっはっは。ほら。また難しい顔をしている」 「あぁ。すみません。つい」 「心配なのか?」 「えぇまぁ。俺も大物……熊は数えるほどしか狩ったことがないですからね」 「ん? 猪ぐらいはあるだろう?」 「えぇ」 「ふむ。まぁ確かにな。初心者を連れているとなると、慎重になるのはいいことだ。だがな、熊程度でビビってちゃあ、ハンターはやっていけんぞ?」 「熊程度……ですか?」 「おう! 熊はあくまで動物だ。魔物の強さと比べれば、な」  そう。その辺の情報が圧倒的に足りない。迷うことなく尋ねた。 「あの、そのへんのことを教えてもらうことって出来ますか?」  するとラーダがニヤリを笑う。 「おういいぞ。でも、お前さん。何が出せる?」  どうやら有料らしい。 「えっと、じゃあ、そうだな。とりあえず今日の夕飯代ではどうです?」 「あっはっは。分かった。良いだろう。じゃあ今日の夕飯代に見合う分を教えてやろう」  そう言って俺は彼に教えを乞うこととなったのだった。
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