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024:ラーだとジャック
ラーダに色々と質問をする。特に魔物のことを。
「お前さん。魔物を狩ったのは今日が初めてか?」
「そうです。俺の居たところでは魔物が居なくて」
するとラーダが「ほぉ、魔物が居ない場所か。俺には想像できんな」と笑った。よく笑う男だ。だが豪快で屈託がなく、いい男だと思う。
「熊は何回ほど狩った?」
「8回ほど」
「ふむ。悪くない」
「基本は鹿がメインでした」
「ほぉ。鹿か。警戒心が強くて近づくのが難しい獲物だ。うん。それを狩れるとなると獲物は弓か?」
「いえ。銃という、そうですね。遠距離系の武器を使います」
「銃? 聞いたことがないな。しかしそうか遠距離武器か」
「はい」
「ハルもか?」
「そうですね」
ラーダが沈黙する。そして……
「明日。俺たちと組んでやってみるか?」
そう言われて、すぐにハイそうですかとは頷けない。まだそこまでは信用ができないからだ。森の中で殺されて身ぐるみを剥がされる。なんてことも起きるかもしれない。俺だけならまだいいが、ハルが居る。行動は慎重にしたほうがいいだろう。
そんな俺の考えがわかったのか、ラーダが頷いた。
「そうだな。すまん。まだ信用できないよな」
俺は素直に謝罪する。
「すみません」
「いや。いいさ。カセには守らなきゃならん対象がいる。その警戒心は大事だ。よし。そうだな。じゃあ明日。ハンターギルドに行こう。そこで俺たちのことを聞いてから、その後どうするか判断してもらおう」
「ハンターギルド?」
「そうだ。ハンターギルドで情報収集だ。まずは俺たちの事を聞いてくれ。それから、そうだな。なんなら護衛依頼を出してくれても良い」
「護衛依頼?」
「そうだ。俺たちにカセが護衛依頼だ。それなら仕事の関係だ。悪くない話だと思う。それに俺たちが組むことを、第三者で中立の立場のハンターギルドが保証してくれる。どうだ? 多少は安心ができるだろう?」
なるほど。確かに。
このラーダと言う男。結構いろいろ考えているようだ。
「まぁ、それもこれも明日。ハンターギルドで俺たちの評価を聞いてもらってからだがな。な? ジャック?」
するとジャックと呼ばれたイケメンが頷いた。
「あぁ。組むんですか?」
「おそらくそうなる。期間は分からんがな」
俺は苦笑い。よほど自信があるらしい。でも、渡りに船とはこのことか。いや。まだ油断はできないんだ。気を引き締めないとな。
その後は、軽く話して解散となった。
とりあえずは明日だ。
ハルを見る。
きっと大丈夫。
なんとなくそう思った。
いや、願った。かな?
まぁ何はともあれ今日は疲れたな。
「おやすみ。ハル」
「はい。おやすみなさい加瀬さん」
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