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030:病※ラーダ視点
朝になった。しかしカセとハルが起きてこない。
「ジャック。ちょっと部屋に行って二人を呼んできてくれ」
「はい」
そう言って、2階の個室へ上がったジャックだったがすぐに降りてきた。
「えっと、中から返事がないんだけど?」
「あん? ん~」
何かあったのか?
俺は心配になったので宿に頼んで合鍵で中に入ってみた。するとそこには意識を失ったカセとハルの姿があった。
「おい! カセ! ハル! おい!」
ゼェハァゼェハァと荒い呼吸をしている。汗も尋常じゃない量が流れている。風邪か?
それにしては昨日まで元気だったが。
カセの額に手をやると、かなり熱い。
「おい! ジャック! 薬師を呼んでこい!」
「はい!」
ハルの様子を見ていたジャックが走って村に常駐する薬師を呼びに行った。その間にカセの服を着替えさせる。どうやら水を飲もうとして入れ物を倒したようだ。しかし2人同時に風邪。なにかの流行病か?
そうなると俺にも伝染るかもしれない。不安ではあるが、まぁ今はとりあえず2人だ。
意識のないカセとハルに水を少しだけでも飲ませる。
そうしている間に、薬師がやってきた。しばらく2人の様子を観察した後で頷いた。俺は勢い込んで尋ねる。
「何の病気だ?」
すると薬師は言った。
「エルド熱ですね」
「エルド熱? って、え。あのエルド熱か?」
「えぇ」
エルド熱ってなぁ、この国では珍しくない。子供がかかる病気だ。
「大人が2人揃ってか?」
俺が尋ねると薬師はポーションを取り出し、飲ませながら言った。
「えぇ。ちょっと珍しいですが、この2人。見たところ異国人のようですからね。だから耐性がなかったのでしょう」
あぁ、なるほど。確かにそうだ。
「なんだ。エルド熱か。脅かすなよ~」
すると薬師が真面目た顔をして言った。
「確かに珍しい病気ではないですけど、油断はできません。見たところ意識を失うくらい重症のようですし」
「そ、それもそうか。で、その。大丈夫、何だよな?」
「まぁしばらく安静にしていれば大丈夫でしょう。1日3回。この滋養強壮剤を飲ませてください。もし容態に変化があったら呼んでください。薬を処方しますから」
俺は思わず大きく息をつく。ジャックの方も安心したようで、へたり込んでいた。
あ~。マジ焦ったぁ……
それからは、宿の丁稚と女将にお金を渡して、2人の看病をしてもらった。カセの方はともかく、ハルの方は女性だからな。男が看病ってわけにも行くまい。
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