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031:仲間
熱が下がったのは4日後のことだった。この4日間。時々様子を見にきていたラーダとジャックに改めて礼を言う。
「ありがとうございました」
もしハルと2人だったら、どうなっていたのかを考えると怖くなる。ハルもまた二人にお礼を言った。特にジャックは、何かと甲斐甲斐しくハルの世話をしていた。もっとも邪魔だよと女将さんに言われて追い出されたりしていたが……
そんな2人が、それぞれの笑顔で応える。ラーダはニッカリ笑って「よせや、俺は宿の人間に看病を頼んだだけだ」と言って謙遜。ジャックは照れながらもハルをチラチラ見つつ「いえ。元気になって良かったです」と言った。
現在ベッドの上で上体だけを起こしての対応中。いちおう念のため今日一日は寝ておけという。
まいったな。二人に借りができてしまった。それも特大の。
俺はステータスを開く。3人が何をするのだろうと見ている中で俺はショップから氷を購入。そしてもう一つ。ウォッカも購入した。かなり高く付くが、まぁ良いだろう。
2人にコップを用意してもらって、とりあえずストレートで飲んでもらった。
「初めてだとかなりきつい酒だから、少しづつ飲んでくれ」
酒という単語にラーダが反応した。
「酒? そのステータスって魔法は酒まで出せるのか?」
俺は頷く。
「種類は多くないがな。まぁとりあえず舐めてみてくれ」
言われたラーダは本当に少しだけ舐めた。
「おっ、これは……」
そうして、今度は一口。
「おぉ! おい! これはクセが少なくて美味いぞ! ジャック、飲んでみろ!」
言われてジャックも、飲んでみる。そして目を見開いた。
「これ……えっ。美味しい」
普段は度数の少ないエールを飲んでいる人からしたら、かなりきついはずだが、それでも2人は美味いといった。
「おいおい。どうなってるんだ? ステータスって魔法は」
俺は一度ハルへ視線を向けた。色々話すぞという意思を込めて。
「このステータスって魔法だが、まぁ他にも色々とできるんだ。武器の強化はもちろん魔法を取得することも出来る。たぶんな。まだ取ったことがないが。ハル。試しに光属性の魔法を取ってみてくれ。それぞれレベル1でいいから」
ハルが「はい」と頷き、魔法の取得を始める。現在7ポイントあるから、多分取得できるはず。
そうしてハルが操作をはじめて、しばらくした頃。頷いた。
「うん。はい。取りました。感覚的には大丈夫です。光属性魔法の浄化を使います」
そう言ってハルが少し目を閉じた後で『ピュリフィケーション』と唱えた。すると少し薄汚れていたラーダが綺麗になった。まぁたいした違いはない。もともと身奇麗にはしていたようなので。でも魔法をかけられた本人は「おっ!」と感じたようだ。
自分たちの能力。隠し事を打ち明ける。これで少しは信頼の証になっただろうか。それに気がついたのだろう。ラーダが少し照れたように言う。
「いいのか。色々見せちまって?」
「あぁ。まぁこれで裏切られたら、俺の人を見る目がなかったってだけのことだから」
するとラーダはニヤリと笑って拳を突き出した。
「うん?」
「よぉ兄弟。こういう時は拳を打ち合わせるんだぜ」
「よろしくな。ラーダ、ジャック」
「あぁ。こちころそよろしくだ」
「えぇ。よろしくお願いします」
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