034:エルフ

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034:エルフ

 食堂に到着するとそこには、ラーダとジャックがいた。俺たちを見て手を振りかけ、固まった。  当然、俺の後ろ。ハルの隣に居るエリスさんを見てだろう。  ラーダもジャックも小さく「エルフ……」と呟いた。俺は彼女を2人に紹介する。 「エリスさんだ。えっとぉ、ミネル氏族のウバの娘さんだ、そうだ」  ラーダとジャックが顔を寄せ合い話し合っている。 「森エルフか?」 「いえ。多分、違うと思います」  二人の様子がおかしい。俺は率直に聞いてみた。 「あ~。どうしたんだ。二人共?」  するとエリスさんが前に出て言った。 「たぶん、私がエルフなので驚いたんだと思います」 「あ~、驚くほど美しいもんな」  俺の言葉にエリスさんが苦笑いを浮かべた。それを見てラーダとジャックも苦笑い。 「あれ? 俺、なんか変なこと言ってる?」  するとラーダ。 「まぁ、異国人のカセもハルも、この国の事情には疎いだろうからな」  そう言ってラーダはジャックを見る。ジャックが説明をしてくれた。 「エルフには大きく分けて2種族。森を捨てたエルフと、森を護るエルフがいると言われています」  ジャックがエリスさんを見る。エリスさんは微笑んでいるだけだ。 「森を捨てたエルフは人間の街で暮らしていますが、その……」  言い辛いことのようだ。それを見てエリスが言った。 「基本的に王国民ではないというのが主流な考えです。2等市民。下層民と言う感じで……」  ジャックは申し訳無さそうな顔をしている。それを見てかエリスが言った。 「カセさん。ハルさん。ありがとう。食事はまた今度にしましょう」  そう言ってエリスさんは出口へ独りで歩き出した。俺はその寂しそうな背中を見て思った。ここで引き止めなきゃきっと永遠にお別れだ。それは、何だか凄く嫌だ。 「エリスさん!」  呼び止めた俺の声に、静かに振り返るエリス。引き止めたは良いが果たして止められるか?  そう思って一瞬躊躇した。するとそこにハルが割って入った。 「エリスさん。一緒に食事をしましょう!」  エリスの目が見開かれる。俺もそれに乗っかる。 「奢りますよ」  沈黙と静寂が食堂に降りた。するとそこにラーダが苦笑いを浮かべながらも一言。 「おい。カセ。お前、今は金がねぇだろ。誰が奢ると思ってんだ?」  あっ、そうだった。俺はラーダを見る。ラーダも俺を見ている。そして根負けしたようにラーダが言った。 「エリスさんよ。一緒に食おう」  するとエリス。 「良いんですか?」 「あぁ。俺らのリーダーが良いって言ってんだ。なら問題ない」  えっ? 「リーダー? 誰が?」 「お前だ」 「いや。ここはラーダのほうが良いだろう? 経験が上だし」 「年齢はお前さんの方が上だろう? はっは。まぁいいさ。その辺のことは追い追い決めよう。とりあえず、飯。食うんだろ?」  こうして、俺たちはご飯を一緒に食べたのだった。
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