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038:危機
オーク6体をサクッと倒して胸から魔石を取りだして、再び狩りに。今日の獲物は換金率の良い熊なんだが……
なかなか見つからんな。
昼を過ぎ、そろそろ帰ろうかという所で、索敵に反応が!
「未確認生物。反応が大きい! 1体だ! 気をつけろ!」
俺が叫んだと同時にそいつは現れた。二足歩行の赤黒い肌の大鬼だ。ラーダよりも大きい。2メートル以上はあるようだ。
「くそったれ。オーガだ!」
ラーダが悪態をつきながら剣を構えた。ジャックも叫ぶ。
「長剣を持っています!」
他の冒険者からでも奪ったのか武器を持っている。戦闘態勢に入ったところでオーガが吼えた。「うぉおおお」とも「がおぉおおお」とも聞こえる声だ。
せめて一発当てて手傷を負わせればと思って銃を構えたが戦闘はすぐに始まってしまった。
2人対1匹の戦闘。
援護したいが、かなりの速度で動き回る2人に誤射しそうで怖くてできない。後ろに回り込もうか。そんな事を考えていた所で更に索敵に反応が。
「さらに敵? グリーンエイプだ! 囲まれているぞ!」
しかしラーダから悲痛な叫びが。
「こっちは手が離せねぇ! カセ! ハル! 逃げろ!」
逃げる?
ラーダとジャックを置いて?
その選択肢はない!
いや。ありか?
俺たちが逃げれば、その分グリーンエイプを引き付けることになる。そうなれば2人の包囲は解かれる、かもしれない。それを実行に移そうと思ったところへ包囲網を縮めたグリーンエイプと遭遇した。
俺はすぐさま叫ぶ。
「無理だ。すでに包囲されている。抜け出せない!」
そして、すぐさま銃を発砲。
「ハル。一番手前にいるのから駆除だ! リロードが重ならないように気をつけろ!」
そう指示を出すが、しかし敵が多い。
「くっそぉ!」
撃つ。撃つ。撃つ。それを弾数分、撃ち尽くした所でリロードを……って、やっている暇がねぇ!
そこにハルの悲鳴が聞こえた。視線を向けると、ハルの左腕に1匹のグリーンエイプが噛みついているのが見えた。
「くっそ!」
俺はすぐさま駆けより、グリーンエイプに助走をつけて蹴りを入れる。
「ハルから離れろ!」
俺は腕を負傷したハルを後ろにかばいながら、銃を振り回す。もうリロードをしている余裕はない。それでも数の暴力には抗しきれず、グリーンエイプにどんどん囲まれていく。
これは……駄目か……!
そう思っても諦めきれない。後ろのハルだけでも!
しかしその時。女性の声が場に割って入った。
「助太刀します!」
その瞬間。キィンという甲高い音が鳴った。同時に俺たちの周囲の地面に氷の棘が一瞬にして生えた。周りに居たグリーンエイプが串刺しになっている。包囲が……解けた。
唖然とする俺とハル。そこに声の主が登場した。金の髪に房状の耳。スラリとした体躯。細身の剣を携えた女性。
「エリスさん!」
叫ぶ俺に彼女が一瞬だけニコリと笑い、何か赤い液体の入った瓶を投げ渡してきた。
「ポーションです。今のうちに!」
俺はそれを受け取り、ハルの腕に掛けた。その間もエリスさんは剣を振り回して、俺たちを護衛している。
ポーションとやらはすごい効き目のようだ。ハルの傷がみるみると治っていく。
治療を終えた俺は、すぐさま銃に弾を込めていく。リロードが完了したら。また発砲を繰り返す。傷が癒えたハルも同様だ。
しばらくするとグリーンエイプの数が減っていき、少し余裕ができたのでラーダとジャックの様子を見た。
彼らは拮抗しているが、大きな怪我はないようだ。
見た感じ。オーガは剣を振り回しているだけなのだが、素手に比べれば間合いが長い分、2人は攻めあぐねているように見える。
そんな2人に、エリスさんが援護をするために声を張り上げた。
「大技を放ちます!」
そう言って剣を収めて、弓を引く用な感じの姿勢を取った。すると彼女の周りに風が吹き荒れる。なにか魔法的なことをするようだ。
そう思った瞬間。彼女の周囲の大気が弾けた。ゴォンと言う音。そのわずか数瞬後にはオーガの頭が吹き飛んだのだった。
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