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039:勧誘してみた
敵を全滅させた俺たちは、その場にへたり込んだ。
「大丈夫ですか?」
エリスさんに言われて、俺はハルを見る。
「大丈夫か?」
ハルは表情を青くはさせていたものの「大丈夫です」と返事。そして俺とエリスさんにお礼を言った。
「ありがとうございました。加瀬さん。エリスさんも」
少し震えているし涙目だ。ジャックとラーダも寄ってきた。
「エリスさん。助かったよ。ありがとう」
ラーダもお礼を言い、ジャックはハルの傷の確認をした後でエリスさんにお礼を言った。その後は解体だ。オーガもグリーンエイプも魔石しか取れない獲物だ。
現在、オーガの解体を俺たちが。グリーンエイプの解体をハルとエリスさんとジャックがしている。
オーガの胸を切り開いて出てきた魔石は大きかった。
ラーダが俺に言う。
「こいつはぁ驚いた。さすが天然物だ。これは、かなりの価値があるぞ。どうする? とどめを刺したのはエリスさんだが?」
「エリスさんのでいいんじゃないか?」
「いいのか? かなり価値があるぞ?」
「助けてもらったお礼でもあるから」
俺のそんな言葉にラーダはニヤリと笑い、肩を叩きながら言った。
「欲がないな」
「そんなことはないさ。ただそれ以上に恩を感じてのものだ」
俺たちがそんな会話をしていると、そこにエリスさんがやってきた。ハルもジャックさんも一緒だ。エリスさんが言う。
「みんなで山分けにしませんか?」
ラーダが驚く。
「良いのか?」
「はい。私一人では狩れないですから。足止めしてくれる人が居たからこそ大技が撃てたんです」
ラーダが俺を見ている。どうするのかの判断を委ねるつもりだろう。俺はエリスさんに「良いんですか?」と改めて問う。するとエリスさんは「はい」と頷いた。ラーダが苦笑いだ。
「二人共、欲がねぇな」
俺とエリスさんはお互いを見て笑う。するとハル。
「おっ良い雰囲気なのはここかな?」
と言って俺とエリスさんの間に立った。
「バカハル。黙れ」
そう言って頭を軽く叩く。パシーンといい音が鳴る。しかし平然とそれを受け止めてハルは言った。
「そだ。今朝も言ったけどエリスさん。私達と組みませんか?」
しかし今朝と同様に断るエリスさん。
「いえ。迷惑かけてしまうから」
するとハル。
「そんな物は加瀬さんとラーダさんが追い払ってくれますよ」
するとジャック。
「ハルさん。俺は? 俺も居ますよ?」
しかしハル。
「ジャックさんは、う~ん。もっとこう。大人の余裕が必要というか……貫禄が必要というか」
あらら。ジャックを見ると落ち込んでいるのが分かる。だがちょうど良いかもしれない。俺はラーダを見ると、ラーダは肩をすくめただけだった。任せるということだろう。
「ハルも言っているが俺からも頼みたい。エリスさん。パーティーに入ってくれないか?」
しかし、それでも首を左右に振るエリスさん。
「そうか……残念だ」
仕方がない。ならせめて今夜の食事だけでも確約をと思って声をかける。
「わかりました。でも今日の食事会は参加していただけるんですよね?」
「それなら。えぇ」
ハルがエリスさんの腕を取る。
「一緒に帰りませんか? 村まで護衛をお願いします!」
するとエリスさんは、クスッと笑って言った。
「えぇ。それくらいなら」
パーティには勧誘できなかったが、まぁこればっかりはしょうがない。
この後、俺たちは開拓村へと帰ったのだった。
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