042:二人の会話

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042:二人の会話

 その後。村の外で野営をしながら、今後どうするかを話し合った。 「とりあえず、領都に戻らないか?」  ラーダの案だ。 「ここに居てもしょうが無いし」  村に入れないんじゃ確かにそうだ。全員がお互いを見て特に意見がないようなので、そうすることとなった。 ※ ※ ※  夜。見張りをしていて俺はハルとスキル構成をどうするのかを話し合った。現在、俺がレベル17でハルが16だ。 加瀬のレベル17・・・1ポイント 異世界言語=1 読み書き=1 年齢=-2歳 キャッシュ=2回 索敵=3 銃の静音性=2 銃の威力=2 銃の反動軽減=2 弾倉数アップ=1  ハルはこんな感じ。 ハルのレベル16・・・1ポイント 異世界言語=1 格納=1 銃の反動軽減=1 弾丸の汎用性アップ=2 銃の静音性=2 銃の威力=1 光属性魔法=1 魔力=1 魔力制御=1 キャッシュ=2回  そこで1ポイントは、もしもの時に残すとして、振れるのは2ポイントだけ。 「索敵とキャッシュかな。弾の弾倉数アップも欲しいが……」  そう考えると色々と欲しいわけで、中々ままならない物だな。レベルの上がり方も遅くなり始めたし。  ちなみにハルはキャッシュに2ポイント変換している。それで色々と旅支度をしていた。 「ハルは今後どうしたい?」 「そうですね。攻撃魔法は要らないかな。エリスさんが加入したし。でも光魔法はレベルを上げたいですね。魔力も欲しい。でも弾倉数アップも欲しいし……う~ん。こうなってくると早くレベル上げてポイントが欲しいですね!」 「そうだな。俺も弾倉数アップが欲しい。とうぜん威力も上げたいし反動軽減もほしい。飛距離アップも欲しいし、索敵も距離を伸ばしたいし制度も上げたい」  そういった物を全部取るとなると、いったいレベル幾つ必要なんだよってな。そしてレベルとやらは、上限はあるのかとか気になるところだ。もし上限があるならマジで考えて取らないと詰むことになる。 「そういえばハルは読み書きは取らないのか?」 「そうですね。スキルとしては取らないで、自分で勉強しようかと」 「なるほど。その手もあるか。そう言えば光魔法ってなぁ自分でレベルを上げることって出来るのか?」  俺の素朴な疑問。ハルは頷き答える。 「出来はするそうですよ。ただし1つレベルが上がるのに10年単位になるだろうってエリスさんが言っていました。よほど才能に恵まれている場合でも数年単位だそうです」 「う~ん。ならレベル3ぐらいまで取れれば人としては結構なレベルになるのか」 「ですね。でも後レベルを2上げるためには6ポイント必要なわけで……それならもっと別のやつを取ったほうが良いかなって。回復にはポーションもありますしね」 「だなぁ」 「でも、このポーション。私がエリスさんから渡された4等級でも金貨が必要だそうですよ」 「高いな。でも金さえあれば、か」 「そうなりますね」  ふぅ。万全を期そうとすると、あれも必要これも必要、と。そしてそのどれもが足りないというのが現状だ。  俺は空を見上げる。星が綺麗だ。 「綺麗ですね」  ハルも同じことを思ったようだ。 「そうだな」  焚き火はあるが、それでも寒い。 「寒いですね」  やはりハルも同じ気持ちだったようだ。 「あぁ。寒いな。もう雪の月に入ったそうだぞ」 「12月、ですよね?」 「そうだな」  ハルが考え込む。 「う~ん。もう少し狩りがしたかったなぁ。これからが本番なのに!」 「だなぁ」 「出禁は痛いですね」 「あぁ。まぁな」 「そだ。加瀬さん」 「あん」 「私。ご免なさいをしていなかったです」 「何かあったか?」 「酒場でのことです」 「あぁ。あの男に絡んだことか?」 「はい」 「別にいいだろ。ハルが行かなきゃ俺が行くところだったんだ」  するとハルはキシシと笑った。 「じゃあ、出番を取っちゃったことを謝っておきます」 「はは。そうだな。あそこで俺が格好良く登場する予定だったからな」 「格好良く?」 「何だ? 文句か?」 「いえいえ。何でもありませんよ?」  くっそ。 「それよりハル」 「はい?」 「ジャックとはどうなんだ?」 「え」  どうして、そこで目が泳ぐ。 「気持ちには気がついているんだろ?」 「う~。まぁそうですけどぉ」 「なにか不満でも?」 「もうちょっとこう、大人の魅力みたいな? 貫禄というか。余裕みたいな物が欲しいかなって」 「それが備わるのを待っていたら取られるぞ?」 「そうですけどぉ」 「自分で育てれば良いだろ。その点、ジャックならハルに惚れ込んでいるから言う事を聞くと思うぞ?」 「う~ん」  ハルが悩み始めた。 「悩め悩め。若者よ」 「くっそぉ。オッサンめ……」 「はっはっは」  取り留めのない会話は続く。 「激動の一ヶ月だったな」 「ですねぇ」 「だが充実してる」 「そうなんですよねぇ」 「帰りたいか?」 「正直に話すと、帰りたくないです。でも父さんと母さんに挨拶ぐらいはしたいかなって。心配してるだろうなぁって……」 「だよなぁ」 「駆け落ちしたとか思われているんですかね?」 「……それは凄く嫌だ」 「傷つくなぁ。そんなに私のこと嫌ですか?」 「んなわけ無いだろ。人としては魅力的だぞ? でもお前とそういう関係だと思われるのは嫌だ」 「う~ん。まぁそうですねぇ。付き合い長いですからねぇ」 「お前が小学生の頃から知っているからな」 「ロリコンからしたら、よだれを垂らしながら喜ぶ関係だと思いますけど?」 「怖いこと言うなよ。俺にその性癖はない」 「だから私は安心できるんですけどね」 「……そうか」 「……はい」  しばし沈黙。すると静寂が辺りを支配する。風が森の木々を揺らす音と、焚き火の薪が燃え爆ぜる音だけが聞こえる。 「ハル。一緒に来たのがお前で良かったよ」 「ん?」 「1人だったら頑張れなかったと思う」 「そうですか?」 「あぁ」  その後。見張りを交代するまで、色々と話し込んだのだった。
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