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045:冬の森での狩り
領都で冬を過ごす事になった俺たちは、さっそくランドクルーザーに乗り込み北の森を目指した。森までは車で2時間ほどで着いた。そしてさっそく危険だという北の森へと踏み込む。
現在の時刻は朝の9時頃。新雪の柔らかな感触を感じながら森を進む。すると森の浅い層だというのに、さっそく魔物と遭遇した。ゴブリンとそれより一回り大きな赤黒い肌の鬼もいる。
「ホブゴブリンだ。ゴブリンの上位種で強いぞ」
ラーダにそう聞いた俺は「銃が通用するか試したいがいいか?」と皆に確認する。全員から許可をもらったので、さっそく試してみる。周りのゴブリンを速やかに排除するべく銃を発砲。
「ん? 少し硬いか?」
普通のゴブリンに見えるが違うのか?
まぁいい。残ったホブゴブリンの心臓付近を撃ち抜く。通常の銃より静音性が増しているとはいえ完全には音は消えていない。タァーンという音は静かな森に響く。白い雪に真っ赤な血飛沫が舞う。
が……
「一発で沈まない!」
威力も増しているはずの銃の攻撃に耐えた。そしてホブゴブリンは吠えた。
「がぁああああ!」
瞬間。身を屈め、こちらに突っ込んでくる。
「もう一発!」
そう思って銃を構えた所で、ホブゴブリンが前のめりに倒れた。しばらく様子を確認して息を吐く。
「ふぅ……」
参ったなこりゃ。ラーダが真横にやってくる。
「タフだろ?」
「あぁ。これは困った。俺の銃でこれだとハルの散弾銃だと厳しいな」
ハルが提案してきた。
「余っている1ポイント使って威力あげます?」
「そうだな。だが少し反動がきつくなるぞ?」
「そうでした……どうしましょう?」
「まだポイントは取っていてくれ。少し考えよう」
「はい」
俺たちが話している間に、ジャックとエリスがゴブリンの解体をしている。人型の魔物は基本的に魔石ぐらいしか使い道がない。解体もすぐに終わる。
「とりあえず進もう。出来ればハルのレベルを上げたい。できる限りでいいから彼女に任せたいがいいか?」
ラーダに確認を取る。
「あぁ。攻撃力のアップは急務だからな」
こうして、さらに奥へと進む。
「ところで、ずいぶんと浅い層で魔物が出てきたな」
俺の感想にエリスが答える。
「えぇ。冬場は餌が少なくなりますからね。その分、彼らの行動範囲が広がるんです」
「なるほど。おっ、この足跡は……鹿……か? それにしては少し大きいか?」
ラーダに尋ねるが「何だろうな。分からん」と返ってきた。隣に来たエリスが変わりに答えてくれた。
「レッドアイかもしれませんね」
「レッドアイ?」
「見た目は鹿ですが魔物です。赤い目が特徴なんです」
「強さは?」
「メスかオスかで変わりますね。オスは強いです。ホブゴブリンでさえ狩られます。メスは臆病で基本的には襲いかかっては来ません」
そこまで会話をしたところでハルに指示を出す。
「ハル。訓練だ。メスなら狩るところまで任せる」
「はい!」
こうして冬の森での狩りが本格的に始まるのだった。
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