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050:2枚の依頼表
翌朝。野営設備を撤収して、来た時とは違うルートで帰る。当然のようにゴブリンやホブゴブリン。オークなんかが出た。野生動物と違って魔物は冬でも元気なようだ。
狩人としては有り難いが、地元の人間にとっては本当に困った生き物なんだと思う。ザックザックザックと雪の上を歩く。真っ白い雪に自分たちの痕跡が残されていく。
ちなみに熊の肉やら毛皮やら胆やらは格納に入れてある。時間を停止させるような機能はなく温度調整もされていない。普通に俺たちのいる環境に作用されているようだ。
およそ半日を掛けて森を出て、車に乗り込み安全運転でトロトロと走る。
除雪がされていない雪道。どこに何が埋まっているかわからないからな。
来たときには2時間だったが領都に帰るのに3時間かかった。まぁ徒歩だとその倍以上掛かるであろうことを考えれば贅沢な話なんだけど。
領都についた時には、すでに日が暮れていた。大門は閉まっていたが、横の小さな出入り口は空いているので、兵士にお願いして通してもらった。
「ふぅ。人の世界だぁ」
ラーダが大きく息を吐いている。俺はさっそく指示を出す。
「二手に別れよう。宿を確保する組とハンターギルドで換金する組に」
するとハンターギルドには俺とエリスさんとジャックで行くことになり、ハルとラーダが宿を確保する組となった。
珍しい組み合わせになったが、特に意味はない。それぞれが行きたいところを示しただけだ。
「よっしゃ。じゃあ俺は宿だな。ハル行くぞ」
「あいあ~い。部屋割りは前回と同じでいいんだよね?」
俺は頷く。
「あぁ。大部屋とハルとエリスが泊まる二人部屋だな。じゃあ頼んだぞ」
「あいあ~い」
こうして、俺とジャックとエリスで行動を開始するのだった。途中でのこと。
「エリスさんもジャックもギルドで依頼を探すんだよな?」
エリスが頷く。
「そうですね。冬にしか採れない薬草なんていうのもありますから。もし依頼があるのなら受けておこうかと」
俺はなるほどと頷き、ジャックを見る。
「ジャックは?」
「僕は勉強ですね。冬の仕事にどういうのがあるのかぁとか。熊は幾らで売れるのかぁとか」
「勉強?」
「あはは。はい。まぁ知っておいて損はない、かなぁと」
「ふぅん。勉強熱心だな?」
「ふふ。えぇ。ちゃんとした大人になりたいですから!」
そうか。いい心がけだな。
そんな会話を交わしているとハンターギルドに到着した。中へと入る。まだ利用は数回ほど。ほとんど初心者と変わらない。ベテランのエリスに中堅から上位どころのジャックとラーダという仲間に恵まれ、こなす仕事は間の中堅どころとなっている。
俺とジャックは受付へ。エリスが依頼表の確認に行ったのだった。
熊は結構いい値段で売れた。毛皮も胆も肉もだ。ジャックが驚いている。
「結構いい値段になりましたね」
「これは、ありがたいな」
他にもゴブリンやホブゴブリン。オークの魔石も売れた。レッドアイもいい値段になった。たった2日で金貨1枚と銀貨や銅貨がジャラジャラ、という感じだ。
俺たちが換金している間にエリスが依頼表を持ってきた。何故か2枚も持っている。
「こっちが薬草の依頼。もう一枚がちょっと面白そうな内容なので持ってきました」
そう言って、彼女が見せてくれた紙には北の森で噂される未確認生物の発見・調査。可能なら討伐の依頼という文字が書かれていた。
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