051:雲をつかむような話

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051:雲をつかむような話

 依頼表を宿に持って返ってきて、全員で検討だ。  まずはラーダ。 「確かに面白そうな依頼だな」  ジャックが答える。 「僕も面白いと思います。もし本当に居るなら、ですけどね」  俺が首を傾げる。 「しかし未確認の生物を探せと言われても……」  ハルが俺の言葉を引き継いだ。 「ですよね。どうやって探すんです? 北の森って言っても広いですよ?」  これにはエリスが答えた。 「噂とあります。まずはどのような噂があるのか調べてみてはどうでしょう?」  ジャックが同意する。 「いいですね。どうします? 挑戦してみます?」  俺は依頼表をもう一度見てみる。 「発見できなくても討伐ができなくても罰則はなしか」  ハルが「でもあれですね。ちょっと怖いですね」  エリスが頷く。 「危険度は高いですね。ただ知らずに遭遇する可能性もあったんですよね」  ハルがどうする。 「そだね。北の森に入る以上は避けては通れないかぁ」  俺は頷く。 「とりあえず噂の出どころだけでも確かめよう。もし危険そうなら避ければ良い」  全員の方針が決定。この後、噂の出処の調査をすることになった。組は俺とエリス。ハルとジャック。ラーダは情報屋を当たるそうだ。  そうして調べた結果…… 「どうでした?」  ハルが笑顔で、そう尋ねてきた。まずは俺が調査結果を発表する。 「俺の方だが何でも対象は黒い影らしい。大きさは熊並みだそうだ」  するとハルが首を傾げた。 「あれ? 私たちのと違う……」  ジャックが頷く。 「ですね」  俺が「ハルたちはどう言う噂だったんだ?」と尋ねれば、ハルがジャックを促した。ジャックが答えるようだ。 「はい。なんでも空中を漂う光る玉だったそうです。ゴースト系の魔物じゃないかと言っていました」  俺たちとは真逆の噂だ。 「ラーダはどうだったんだ?」  すると。つまみの豆を食べていたラーダがエールで流し込んでから言った。 「おう。俺が聞いたのも、お前らが話していた内容と一緒だ。ただ情報屋が集めた内容を精査した結果、目撃時刻は夜間で天気のいい日は出て来ない、かもしれなくて。森の中でも比較的、開けた場所で見かけたという共通項があったそうだ。ただし確定じゃないけどな」  俺が纏める。 「え~っと、つまり話をまとめると。対象は熊並みの大きさの光る玉だか影で空中を漂っていて、夜の中でも暗い日の開けた場所でしか出てこないという……なんか色々と矛盾してるぞ?」  俺たちは全員で苦笑い。ハルが誰にとも無く問う。 「どうします? 調べた結果、余計に分かんなくなっちゃいましたね」  全員が困り顔だ。  俺がとりあえずの方針を提案してみる。 「そうだな。こうなってくると目撃情報が当てにならない。積極的に探して見つかるもんでもなさそうだ。俺たちに出来ることは天気の悪い日の夜の野営は気をつけて行う。ぐらいかな」  空中を漂っているんじゃ、足跡などの痕跡も見つかりそうにないし。結局この依頼は保留と言う形になったのだった。
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