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052:こういう日もあります
噂を集めて回った当日と翌日の一日を休日に充てた俺たちは、再び北の森へとやって来ていた。
「本日は晴天なり。本日は晴天なり~」
ハルの言う通り、今日は最近では珍しい晴天だ。基本的に曇りか雪が降るかのどっちかだからな。俺は車を降りて大きく背伸び。するとハルも真似た。
「くぅ~。気持ちいいですねぇ」
確かになぁ。全員が車から手荷物を持って、さぁ移動だ。
足元の雪がキラキラとしていて眩しい。柔らかな日差し。風も心地よく最高の日だ。ハルが言う。
「こんな日はお昼寝してたいですね」
「だなぁ」
でも、お仕事だ。
というかね。あれだ。
この世界には娯楽がないんだ。あっても精々がボードゲームぐらい。正直飽きる。なので昨日の一日をオフにした手前、二日目もとなると暇が過ぎるのだ。
「なぁラーダ」
「あん」
「皆って休日は何をしてるんだ?」
「何って……一日中、そうだな。酒でも飲んで喋ってんじゃねぇか? 後は内職したり家の修理をしたり」
「そうか……」
日本にいたらな休日は狩りにでも出てたのになぁ。そんな俺の心の声が聞こえたのかハルが小声で話しかけてきた。
「日本と、こっちじゃ逆転してますね」
思わず苦笑い。
「そうだな。こっちじゃ趣味が仕事になってんな」
「ですねぇ」
まぁいいけどな。黙々と歩く。するとすぐさまゴブリンとホブゴブリンが出てきた。
ってこいつらは本当に毎回毎回、見かけるな。
さくっと駆除する。もはや戦闘の描写すらもない。だってなぁ。撃った。倒したで終わる話だしな。危なげなく倒しました。
って、また出たよ。今日は遭遇率多くね?
その後も、コンスタントにゴブリンやホブゴブリンが出てくる。
「なぁラーダ。今日は何だかおかしくね?」
「あぁ。やけにゴブリンが出てきやがる」
「何かあるのかな?」
「どうだろうな。たまたま……で片付けて何かあったらヤバいな。どうする? 今日は帰るか?」
う~ん。少し迷って全員で多数決。
「どうする?」
すると全員が帰ると判断。いつもと違う時は不測の事態が起きている可能性が高い時。そうなると危険もあるかもしれない。こういう時は無理せず引き返す。何より命大事に、だ。
森の奥を見る。それで何が見えるというわけでもないが。何となく、そうしてしまった。
何が起きているのやら……
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