058:戦闘終了と報酬の話

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058:戦闘終了と報酬の話

 銃弾が音速で発射され、そしてそれは対象の肩甲骨付近に命中した。悲鳴を上げ苦痛の表情をする獣。しかし足が埋まっているために逃げることすら出来ない。俺はさらに撃つのを繰り返す。ボルトアクション式なので一発撃つごとに弾を装填しなければいけないが。それを弾数の限り繰り返す。  そして全弾撃ち終えてみれば、人面獣は崩壊した地面に埋まるようにして死んでいた。  あっさりとした終わり方に拍子抜けしてしまう。たぶん最初の一発で致命傷だったのだろう。敵がこっちを完全にナメていたからこその勝利。  ハルを呼ぶ。 「ハル。ジャックは!」  するとハル。 「蘇生、大丈夫です!」  そう言って安堵の表情を浮かべて、にっこり笑った。  そこでラーダを思い出した。 「ラーダ!」  急いで彼の元へと駆け寄る。まず目についたのが両腕だ。酷く裂けている。電撃傷ってやつだ。かなり威力のある電撃だったのだろう。 「ラーダ!」  呼びかけても返事がない。 「ラーダ! おい! しっかりしろ! 大丈夫か!」  そう呼びかけながら上体を起こすと、微かに反応が。 「うぅ……いてて」  生きてる! 「ラーダ!」 「あぁ。あぁ、何だ? どうした? 何があったんだ……」  ちょっと軽く見当識障害を起こしているようだが無事だ。しかし強力な電撃を食らって何故?  そう思って彼の胸を見てみれば、胸ポケットが酷く裂けている。何故と思って探ってみれば、そこから以前に俺があげたスキットルが転がり落ちてきた。完全に溶けた状態で。  スキットルってのは前にも話したが、蒸留酒用の水筒な。  ピューター製のスキットル。こっちも前に話したがピューター製ってのは錫がメインの合金だ。きっとこれが彼の体内に流れるはずだった電撃を受け止めてくれたのだろう。 「良かった」  俺はハルを呼び、ラーダの傷を治療させた。  その後は、ハンターギルドの職員の向かえが来るまで、死者を弔い、重軽傷者の治療をしたりしたのだった。 ※ ※ ※  戦闘を終え、帰ったその日はすぐに寝た。  翌日の昼。ハンターギルドの2階。 「いやー。よくやった!」  そう言って褒めてくれたのはハンターギルドの支部長さん。年嵩の男性だ。彼に肩を叩かれながら何度も感謝の言葉を貰った。 「報酬は期待してくれていいぞ」  そう言われて、その後の後処理のことを聞いた。 「まずあの気味の悪い獣だが、雷獣と呼ぶことにした。これを持ってギルドに出されていた未確認生物の発見。調査。可能なら討伐。と言う条件を満たしたので報酬の金貨1枚だ」  あ~。そういえばあったな。そういう依頼。エリスが見つけてきたやつだったか。 「それから、その雷獣だが研究サンプル用にギルドが買い取ることになる。魔石も含めてだ」 「いくらになるんでしょうか?」  俺が尋ねてみれば、支部長さんがニヤリと笑った。 「金貨10枚じゃ!」  およそ半年は、のんびり生活が出来る額だ。あっ、でも俺たち5人で山分けだから2ヶ月だな。 「それからホーンベアの方だが……こちらは生存者全員で山分けにさせてくれ」 「まぁ妥当なところですね」 「うむ。だいたい一人当たり大銀貨で3枚といったところだ」  生存者。少なかったからなぁ…… 「それから、生存者がお主たちに礼をしたいと言っておった。そこで窪地で倒したゴブリンやホブゴブリンの魔石の代金はお主らの物となることになった。それが大銀貨1枚」  結構な数だったからな。 「それから、先に送った上級冒険者15名の遺体が見つかった。その遺品の権利をやろう」  俺は一つ頷いて聞いてみた。 「えっと、それって買い取ってもらったりは出来るんですか?」 「あぁ問題ない。査定はしてある。金貨3枚にはなるとのことだ」  多いのか少ないのかよく分からんが、まぁ有り難く頂いておこう。 「今回の討伐を持ってカセのランクを1つ上げたいとおもう」  うん。これで俺のランクは5となった。中堅の下位だな。  こうして今回の件は幕を下ろしたのだった。
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