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063:いろいろなギルド
護衛の仕事は、どちらかと言えば傭兵の仕事だが、時にハンターも雇われることがある。特に街道沿いにモンスターが増える季節ともなれば。季節に応じて転々とするものもいる。
「傭兵ギルドに入るのか?」
俺がラーダに問うと、ラーダは首を左右に振った。
「いや。カセとハルに入ってほしい気持ちはあるが……人を殺せるか?」
俺は少し考えて答えた。
「いや。無理だな。まぁエリスやハルに危険が及ぶ場合はどうか分からんが」
するとラーダは「だろうな」と答えた。そして傭兵には貴族や王族から要請があれば従軍義務が発生する旨を伝えられた。
「戦争か。それに参加する気にはなれないな」
「だろうな。だからカセとハルとエリスはハンターで入ってもらう」
「ラーダとジャックは傭兵ギルドにも?」
「あぁまぁな。他にも探索者ギルドにも入っている」
「探索者……ダンジョンやラビリンスに潜る人たちか」
「そうだ。俺とジャックはそもそもダンジョンで一攫千金を求めて故郷を出た身だ」
「2人は一緒の故郷だっけ?」
「そうだ。まぁその辺の話は置いておいてだ」
探られたくないらしいな。この話になると途端にこれだ。まぁいいけど。
「俺とジャックは傭兵として、三人はハンターとして入ってもらう。やることは今まで変わらない。敵が来れば排除する。それが例え人間でもだ」
人間を撃てるだろうか?
そう思って隣を見る。そこには愛する人がいる。自分が戸惑えば、その分、彼女が危険になる。やらなきゃらならない。
覚悟を決める。とは言っても、襲われないに越したことはないが……
ラーダが心配そうに見ている。
「大丈夫か?」
「あぁ。やらなきゃ失う。自分も愛する人も大事な家族も。なら引き金を引くだけだ」
ラーダが頷く。
「そうだ。それを分かっているなら良い。よし。んじゃあ傭兵ギルドに行くぞ。護衛の仕事を探そう」
こうして、俺たちは傭兵ギルドに向かう。
「ところで、ラーダとジャックは傭兵ギルドのランクはどのくらいなんだ?」
「俺は2級。ジャックは5級だ」
「ラーダは元々は傭兵だったのか?」
「あぁそうだ。モンスターを狩るよりも人間を相手にするほうが得意だな」
「ジャックのランクが低いのは?」
「ジャックは……まぁ人を守る心構えを身に着けてもらうためだけに入れただけだ」
俺はこの際なのでラーダとジャックに尋ねる。
「そういえばラーダは探索者のランクは幾つなんだ?」
「ん? おう。探索者ランクは3級だな。ハンターランクが3。探索者が3。傭兵が2」
「ジャックは?」
「ジャックは探索者は6級。ハンターが4級。傭兵が5級だ」
ついでなのでエリスはどうだろうと見てみれば彼女は言った。
「私はハンターは2級。探索者は7級です」
「あんまり探索者は合わなかった?」
「リッツと組んで入ってたんですけどね……ダンジョンでリッツが亡くなって、独りになって。それきりになってしまいました」
俺は素直に謝る。
「ごめん」
「いえ。大丈夫です」
そう言ってニッコリ笑うエリス。そんな俺達のやり取りを見ていたラーダが、空気を変えるように言う。
「ダンジョンにしろラビリンスにしろ。あそこは闘うのが基本の闘技場みてーなもんだ。少人数で潜るのは危険だ。かと言って大人数だと分け前が無くなってしまう。だから4人から6人ぐらいが妥当だと言われているな」
なるほどな。
「話がそれたな。まぁ傭兵だ。護衛の仕事をしよう。何事も経験だ。だろ?」
俺は頷く。ステータスのレベルは何も戦闘経験だけで伸びるわけじゃないと分かったからな。
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