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066
岩から離れ全体が見渡せるようになってようやく、何が起きていたのかが分かった。
岩だと思っていたのは、一匹の巨大な生物だったのだ。
ラーダが叫ぶ。
「アースドラゴン……」
今ドラゴンって言ったか?
おいおいマジか!
ゴゴゴゴゴと岩がなめらかに動き出した。思っている以上に機敏だ。誰かが叫んだ。
「に、逃げろ、逃げろー!」
その言葉に正気を取り戻した幾人かが逃げ出し始めた。するとアースドラゴンが吼えた。
「ぼぉおああああああ!」
辺り一帯の空気がビリビリビリと震える。なんっつぅ音だ!
それだけで、ただ一声吼えただけなのに、生物としての格の違いを知らされた。しかし何でこんな超巨大な化け物が、こんな街道のど真ん中に居たのか……
しかし、その疑問はアースドラゴンのその後の行動ですぐに理解ができた。
奴は空腹だったらしい。
近場に居た人間をバクリと食べたのだ。恐怖で動けなかった人間をパクっと。その機敏さは体の大きさからは想像ができなかったスピードだ。その後もパクリパクリと首を器用に動かして人を食べていく。
「おいおいマジかよ!」
ラーダが叫び、俺たちも本格的に逃げることに。
そこにハルの声。
「ランドクルーザー出しました。乗り込んでください!」
言われて皆がハッとしたように、動き出した。
だが、一番ハルから離れていた俺が最後に乗り込もとうしたところで、アースドラゴンに見つかった。奴の視線は白のランドクルーザーに釘づけだ。目立つからな。しょうがないよな。でもそっちに視線は困るんだぜ。
「くっそ!」
銃を出す。そして頭に狙いをつけて発砲!
だが、チュインと言う音ともに銃弾がアースドラゴンの岩のような体表に弾かれてしまった。少しは削れたようだが、しかしそれは本当に少しだ。それでも傷をつけられたことに怒ったのだろうか。
アースドラゴンが俺だけを見た。俺はランドクルーザーから距離を取るように走り出した。
「こっちだ化け物!」
その後も2発目3発目と発砲。気を引くためにどんどん銃を撃っていく。辺りは見渡す限りの平原。身を隠すところなんてない。このままじゃ、逃げ切れずに死ぬ!
どうする。どうする。
そう思っていたら、ランドクルーザーの後部座席の窓から上半身だけを出したエリスが叫んだ。
「こっちです!」
ハルも運転席から叫ぶ。
「加瀬さん! 乗ってください!」
そう言って、車をこっちに寄せてきた。と同時に弓を放つような格好のエリスから魔力が溢れているのが見える。エリスの必殺技だ。ちなみに最近この技に名前をつけたとか言ってハルと一緒に練習していたな。
「マジックアロー!」
そう叫んだと同時に魔力の矢がアースドラゴンの顎を目指して発射されたようだ。ちょうど顎の下に居たせいもあってか彼の顎を上空に跳ね上げた。
威力が上がってる?
よく分からんが、アースドラゴンの首が揺れ、軽く目を回しているのが見える。その間にも俺はハルが寄せてくれたランドクルーザーに乗り込むことに成功。そのまま逃走に移るのだった。
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