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日本には初めから関空経由での帰国を予定していた。元々大阪の美音の母親に鷹を会わせるつもりだったから。
「アメリカで色々あったし、ここからまっすぐ福島に帰ろうか?ママには事情を連絡するから」
美音が気を使っている。
けど強行軍で一気に帰るよりも、ここで藤原さんの家で一泊出来るならその方が鷹も楽かもと思う。それにホテルじゃなくてそこなら、美音もそんなに気を使わないで済む。
当の鷹は飛行機の中では殆ど眠っていた。それはとてもありがたかったけど、往路はずっとはしゃいでいて上機嫌だった事を考えると、やはりそこは何かが違っているのかも知れない。
「予定通り西成に行こう、その方が良い」
カンガルー抱っこしたままの鷹を見る、鷹は相変わらず眠っている。ここからなら新今宮駅まで急行で1時間も掛からない。
「うん、分かったわ」
「予定通り荷物は宅急便で送ろう」
最初からそのつもりで荷物を作ってきた。一日分の俺達の着替えと鷹の物をキャリーケースひとつにまとめてある。美夜さん達へのお土産も入っている。
それ以外の荷物を宅急便会社の受付に全部預けて、鉄道の駅に向かっている時に鷹が目を覚ました。
「と〜た…」
「うん、どうした?日本に着いたぞ鷹」
「ま〜?」
「はい、ママもここよ」
俺達の顔を見て、安心したようにまた鷹は眠り始めた。時差の修正はこの小さい身体にはきっとキツイな。
「行こう」
キャリーを美音に持ってもらい、俺は鷹をしっかり抱き締める。三人で南海電鉄の駅に向かって歩き始めた。
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