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狐のお婿さん
初めて見たときのタケルはまだ幼な子で、僕が間借りしていた稲荷神社の境内で一人で遊んでいた。あとで五歳だと聞いたけれど、それにしてはとても小さい体だったような気がする。
幼な子はいつも一人で遊んでいて、日が暮れても帰ろうとしない。遊んでいるのに妙に表情がないのが気になった。毎日一人きりで、ほかの人間が現れないのも不思議だった。
――あの子も僕と同じで、一人ぼっちなのかな。
僕は妖と人間の合いの子だ。見た目は妖狐そのものだけれど、合いの子だからか妖力が弱くて妖の仲間たちからは遠巻きにされている。仲間外れとまではいかなくても、仲間だと歓迎されていない雰囲気はいつも感じていた。だから、気がつけば一人で過ごす時間が多くなっていた。
そんな僕にはお気に入りの場所がいくつかあった。ほとんどは稲荷神社で、とくにちょっと寂れた神社は人間もあまりやって来ないから居心地がいい。そういう神社を適当に渡り歩いていたんだけれど、幼な子の姿が気になってからは同じ稲荷神社に入り浸るようになった。
そんなある日、僕はちょっとしたことを思いついた。人間はキラキラしたものが大好きだ。きっと小さな子どもも好きだろうから、狐火を見せてあげたら喜ぶんじゃないだろうかと思ったのだ。
妖力の弱い僕でも、さすがに狐火は出せる。手元に集中して青白くユラユラ揺れる狐火を出してから、薄暗くなった境内にスイと飛ばした。予想どおりその幼な子は目を大きく見開いたあと、興味津々といった表情で狐火を見つめていた。
その顔がとても可愛くて、僕は近くで見てみたい……ちょっとだけ話してみたいと思ってしまった。
「……あれ、迷子？」
実際に幼な子を目の前にしたら、間抜けにもそんな言葉しか出てこなかった。しかもうっかりしていて妖狐の姿のままだ。頭上で動く耳とお尻から生える尻尾を見たら、いくら小さな子どもでも人間じゃないことに気づくだろう。
――そうしたら怯えて、もう二度とここに来なくなるかもしれない。
そう思ったら、なぜか胸にぽっかりと穴が空いたような気がした。変なことを言って逃げられたらどうしよう。そう思えば思うほど、なんて声をかければいいのかわからなくなる。
――いや、言っても言わなくても怖くなってすぐにいなくなるか。
そう思いながら顔を逸らしたら、「ちがうよ。おにいちゃんは、だぁれ？」と可愛らしい声が聞こえてきた。
驚いて声のほうに視線を戻すと、すぐ近くに幼な子が立っていた。僕を見ている幼な子の顔に恐怖の色は見えない。というよりも、神社の裏の鬱蒼とした場所に僕がいることを不思議に思っている感じだった。
「うーん、誰なのかなぁ」
なるべく怖がらせないようにと考えすぎて、またもやどうしようもないことを口にしてしまった。
「おなまえ、ないの？」
「…………そうだね、ないんだ」
「あのね、じゃあね、ぼくがおなまえ、つけてあげる！」
突然の申し出に、またもや驚いた。まさか、怯えるどころかそんなことを言われるとは思ってもみなかった。
実際、僕は「半妖の狐」と呼ばれていて名前がない。父である人間は名づける前に病気で死んでしまったらしく、母である妖狐は父の後を追って名付けることなく消えてしまった。そんな僕に名前を付けてくれる仲間はいなかったし、呼ばれることが滅多にないから名前がなくても困らなかった。
「ぎん！ おにいちゃん、ぎんいろできれいだから、ぎん！」
幼な子が名前を口にした瞬間、僕の周りが一気に色づいたような気がした。それだけじゃない。虫の音や風で揺れる葉っぱの音、遠くに聞こえる人間が生活する音まではっきり聞こえ始めた。
この瞬間、きっと僕は生まれ変わったに違いない。僕を生まれ変わらせてくれたのは、この人間の子どもだ。体の奥にポツポツと明かりが灯って、じわじわと嬉しい気持ちが広がっていく。そのとき僕は、この幼な子のことをずっと見守っていこうと固く決意した。
その決意は幼な子――タケルが十歳になる前には恋情という別の気持ちに変わっていた。それでもまったく問題ない。僕にとってはタケルがすべてだったから、そう思うのも当然だと納得した。
だけど、恋情を意識し始めたら急に怖くなってきた。人間は妖より成長が早いうえに寿命が短い。きっとタケルもあっという間に大人になって、そのうち僕のことを忘れて、そのまま死んでしまうに違いない。
――そんなの嫌だ……！
僕は、タケルを離さないことに決めた。
そのためには、ずっと一緒にいられるようにしなければいけない。一番いいのは縁付きすることだけれど、あまり小さい体のままだとタケルが困るかもしれない。小さいままじゃ周りの人間たちに変に思われるだろうし、だからといって急に人間から引き離すのも難しそうだ。
それに、小さすぎると僕を受け入れられない問題が出てくる。それなら大きくなるまで待ったほうがいい。そう考えたけれど、やっぱり毎日不安に思った。それに大人になる前に誰かに奪われないだろうかという心配も出てきた。
心配で仕方なかった僕は、十歳になったタケルと縁結びをした。出会った頃はあんなに小さかったのに、それからタケルはどんどん体が大きくなった。周りの子どもたちよりも大きくなったんだから、縁結びをしても平気だと思った。
それに、縁結びさえしておけば僕のものだって妖たちにはわかるはず。
――妖のほうはそれでいいとして、人間はどうだろう？
人間には妖の縁結びはわからない。たまに気づく人間もいるみたいだけれど、ほとんどは気づかないままだ。それだとタケルが人間に取られてしまうかもしれない。
そう思ったらいてもたってもいられなくなった。タケルが大人になるまで待とうと思っていたのに、すぐにでも縁付きしないと不安で仕方がなくなった。
だから、タケルが十三歳のときに縁付きした。体も随分と大きくなっていたし、縁付きしたあと大きくなれなくても平気だと思った。僕を受け入れるにはちょっと不安だったけれど、それもすぐに慣れてしまうはず。
それに縁付きさえしてしまえば、人間がタケルに想いを寄せることはなくなる。そのくらい妖の縁付きは強力なものだ。
これで人間にも妖にも奪われる心配はなくなった。タケルには何も言わずにやってしまったけれど、話して拒絶されるのが怖くて言うことができなかった。縁結びのときは後から話しても怒らなかったし、今回も大丈夫だと思い込んでいた。
まさか、それがタケルにとって許せないことだったなんて思いもしなかった。怒られて散々叩かれて、それに泣かれたときにはどうしようとすごく焦った。縁付きで体は僕のものになったけれど、嫌われたら元も子もない。
あのとき僕は心底怖いと思った。僕の前からタケルが消えてしまうんじゃないかと思って、触れることも声をかけることもできなかったっけ。
「でも、結果的にタケルにはお婿さんとして認めてもらえたし、契りも交わせたし、本当によかったなぁ」
契ってほしいと伝えてから十日後、十八歳になったタケルとは無事に契りを交わすことができた。タケルは緊張していたようだけれど、そこはお婿さんとして僕ががんばった。
もともと妖狐や妖狸は人間を気持ちよくさせるのが得意だ。幻を見せて簡単に騙せるのも人間の心を気持ちよくさせられるからだ。それに昔から妖狐は人間と交わる機会が多いから体の相性もいい。
そう思っていたけれど、タケルは想像以上に敏感で嬉しい誤算だった。僕がちょっと触れるだけで反応してくれるのがたまらない。タケル自身は気づいていないようだけれど、キスが好きだってこともわかっている。触れるだけのキスでも、すぐに目がトロンと蕩けて本当に可愛いんだ。
だから僕は、最初にキスをたくさんすることに決めていた。たくさんたくさんキスをして、トロトロになるまで口の中を舐めてあげた。そうして力が抜けきったところで丁寧に服を脱がせた。昼間の明るい拝殿の裏で脱がしていたのに、トロトロだったからか抵抗はされなかった。
それにしても、初めて見たタケルの裸はすごく……すごく可愛かった。可愛すぎて、見ただけで鼻血を吹きそうになったのは内緒だ。タケルの体は想像していた以上に綺麗で、艶々して美味しそうで涎が止まらなくなった。
僕は興奮したままあちこちを舐め回した。胸の粒を歯で優しくコリコリするのが心地よくて、腰や太ももを撫でながらずぅっとコリコリ噛んでいた。そうしたら、僕のお腹のあたりが濡れたことに気がついた。
思わず「射精しちゃうくらい気持ちよかったんだ」って口にしてしまっていた。タケルは真っ赤な顔と涙目で睨んできたけれど、いつもみたいに殴ったりはしなかった。涙目のまま唇をグッと噛む顔はとても色っぽくて、その顔にやられた僕は興奮してますます止まらなくなった。
本当はもっと時間をかけていろいろするはずだったのに……なんて、いまになって反省したりする。でもそんな余裕は全然なかったんだ。
白濁に濡れたタケルの性器を丁寧に舐め清めながら、尻の割れ目に指を這わせた。指には特製の椿油をたっぷり付けて、慎ましやかな蕾に何度も塗りつけた。もちろんよく広がるように中にもたっぷり含ませたし、丹念に揉みほぐしもした。
それだけでタケルは濡れた声を上げてくれた。あまりに可愛くて、僕のほうが何度か射精してしまいそうになって大変だった。
このままじゃあ挿れる前に出てしまうと焦った僕は、すぐにタケルの中に自分のものを押し込んだ。
――結局、半分も挿れていないのに出ちゃったんだけど。
あのとき、タケルの意識が飛んでいて本当によかった。だって、挿れてすぐに出ちゃったなんて恥ずかしすぎる。
その後、何度も何度も熱く熟れたタケルの中を堪能した。もちろん体の外側もたっぷり触ったし、タケルが気持ちいいところは大体わかった。
だから、次はもっともっと気持ちよくしてあげられると思うんだ。それなのに、タケルに「待て」と言われて十日も経ってしまった。そういう雰囲気になると、すぐにタケルが顔を真っ赤にして「まだ駄目だ！」って怒るから、僕はひたすら我慢し続けている。
――別に、お尻が気持ちいいって変じゃないのになぁ。
初めてだったのに、お尻で気持ちよくなったことが気になっているらしい。縁付きした僕との契りなんだから、気持ちがよくなって当然なのに。
それにあのとき使った特製の椿油には、痛みを少なくするための媚薬もほんの少し入っていた。そういうのを使うのも妖狐や妖狸の十八番で、人間同士では絶対に得られない快楽に浸ることができる。だから、タケルが感じすぎて精を出さないまま何度も昇天したとしても不思議じゃないし、恥ずかしがる必要もない。
……ってことを説明したら、どうしてか思い切り頭を叩かれてしまった。
「僕のお嫁さんは、ちょっと乱暴だよねぇ」
「乱暴じゃねぇよ、教育的指導って言え」
「えぇー。僕、教育されないとダメなところ、そんなにあるの？」
拝殿の隅に座って漫画を読んでいるタケルの傍らに寝そべり、顔を覗き込む。
――あはは、顔が真っ赤だ。
視線は漫画に向いているけれど、顔も首も真っ赤でとてもおいしそうだ。そう思ったら、ついツンツンと頬をつついてしまっていた。もちろんタケルの顔はますます赤くなり、今度はプイッと横を向いてしまった。それが可愛くて、やっぱり笑ってしまう。
本当は新婚さんだから、もっともっと契りを交わしたい。でも、こういう時間も楽しいんだってことをタケルと過ごしていてわかってきた。それが何だか嬉しくて、僕はいつだってニコニコになる。
そんな僕にタケルは「イケメン顔が崩れてるぞ」なんて言うんだけれど、「いけめん」って何だろう。何度かタケルに訊ねたのに、真っ赤な顔をして口をつぐんでしまうから意味はわからないままだ。
「ねぇタケル、そろそろ気持ちいいこともしよう？」
穏やかな触れ合いもいいけれど、やっぱり僕は交わりたい。だってまだホカホカの新婚さんなんだ。妖狸なんて八畳敷きのふぐりで契りまくるんだって自慢していたし、妖狐も負けないくらいじっくりねっとり契る。僕だって妖狐らしく、そういうことがしたい。
「……っ」
真っ赤な顔でタケルがキッと僕を睨んでいる。でも、睨むだけて手は出してこない。思ったことを口にしても、最近は教育的指導っていうのも減ってきた気がする。
――タケルは照れ屋さんだからなぁ。
きっと照れているだけなんだ。ってことは、お婿さんである僕が上手に誘ってあげなければ。
それに「待て」と言われて十日も経った。体も十分休まっただろうし、そろそろ交わってもいいんじゃないかな。ここ数日はタケルからとてもいい匂いがしているし、タケルもきっと交わりたいに違いない。
「僕がどのくらいタケルのことを好きなのか、たくさん教えてあげる」
「…………もう、知ってる」
何かつぶやいたタケルが、漫画を置いて膝立ちで移動した。どうしたんだろうと視線で追いかけていると、僕の脇に来てじっと見下ろしてきた。
「タケル？」
もしかして本当に交わりたくないんだろうか。それなら、残念だけれどやっぱり我慢しよう。そう思って名前を呼んだら、寝そべったままの僕に覆い被さってきて驚いた。こんな素直なタケルを見ることは滅多にないから、驚きすぎて抱き返すこともできない。
「ええと、僕はとても嬉しいんだけど……タケル、大丈夫？ 無理してない？」
「……んだよ」
「だって、タケルのほうから抱きついてくれるとか、どうしたのかなぁってちょっと心配になって」
「……俺だって、こういうことしたくなることもあるんだよ」
僕の肩に顔をくっつけながらモゴモゴ言うタケルは本当に可愛かった。ぎゅうっと抱きついてくる熱が愛おしい。
優しく抱きしめながら、真っ赤になったタケルの耳に「キスしよ？」と囁きかけた。怒られるかなとちょっと思ったけれど、少し体を起こしたタケルは真っ赤な顔のまま触れるだけのキスをしてくれた。
僕はすぐさまキスを返した。のし掛かったままのタケルの背中を撫でながら、口の中をゆっくり舐め回す。たまに舌を噛んだり上顎を舐めたりしながら、背中を撫でていた手でお尻を優しく撫でた。
それだけでタケルの体がビクビクするなんて、敏感な体も素直になった姿もとても可愛い。それに、膨らんだ股間を僕の体に擦りつけているのも可愛くてたまらない。
「……なんで笑ってんだよ」
「だって、タケルが可愛すぎるから」
「可愛いとか、言うんじゃねぇ、よ……」
そう言ってもう一度ギュッと抱きついてきた体を、僕もギュウッと抱きしめ返した。
タケルは自分のことをあまり好きじゃないのかもしれないと思うことがある。いまみたいに僕の言葉を否定するときは、とくにそうだ。もしかして、タケルが親に捨てられたことに関係しているんじゃないかと最近思うようになった。
タケルからちゃんと聞いたことはないけれど、小さい頃に周りの人間から「親に捨てられた可哀想な子」と言われていたことは知っている。タケルが誰かに奪われないか心配で、こっそり覗き見ていたときに何度か目にした光景だ。
妖の僕には「親に捨てられる」というのがどういうことかよくわからない。そもそも気がついたら両方ともいなかったし、親という存在に特別な思い入れがないからだ。でも、人間はそうではないらしい。そのことはタケルを覗き見ていたときに何となく理解できた。
だから、僕もそれなりに気をつけるようになった。親の話は絶対にしないし、僕の親がいないことも話していない。
――でも、たまに思うことがあるんだよね。
タケルは周りの人間に言われたことを気にしすぎじゃないかな。そりゃあ妖と人間じゃいろいろ違うんだろうけれど、そこまで人間の言うことを気にしなくてもいいと思う。
それよりも、タケルには僕が言うことのほうを気にしてほしかった。僕の言葉のほうを信じてほしい。
――いくら僕が「タケルは可愛い」って言っても、全然信じてくれないし。
それが一番の不満かもしれない。タケルは「俺は平凡なんだ」って反論するけれど、僕からすれば腕にすっぽり収まる大きさはちょうどよくて可愛い。もちろん、ほかにも可愛いところはたくさんある。
まず少し硬い黒髪もさらさらで可愛いし、気が強そうな黒目も可愛い。真っ赤な顔もトロトロになった顔もたまなく可愛いし、睨むような目だって照れ隠しだとわかっているから可愛いくてたまらないんだ。
「だから……そういうことを、本人に言うなって言ってんだろ」
――あれ？ もしかして口に出てた？
僕に跨がったままのタケルは、体を起こして真っ赤な顔のまま僕を見下ろしていた。目が少し潤んで見えるのは、たくさんキスをしたからだろうか。僕が可愛いって言ったからだとしたら、とても嬉しいんだけれど。
どちらにしても、真っ赤なタケルはおいしそうでとても可愛いかった。
「タケルは、やっぱりいつでも可愛いね」
「……だから、言うなって」
せっかく可愛い顔を見ていたのに、プイッと横を向いてしまった。でも、今度は真っ赤な耳や首筋が見えて、これはこれで可愛い。
それにしても、人間っていうのはいろいろ難しい。何を言ったら嫌がるのかわからないし、思っていることを言っても恥ずかしがって喜んでくれない。
それにタケルが言われてきたこともよくわからなかった。親がいるとかいないとか、そんなに気にすることなんだろうか。それに学校がどうだとか友達や勉強がどうだとか、ずっとタケルを覗き見てきたけれど、ちっとも楽しそうに見えなかった。
人間は妖よりよほど面倒でしがらみが多くて、そんな中で生きてくのはつらくないんだろうか。僕はそんな世界でタケルに生きてほしくないと思った。もっとたくさん笑って泣いて喜んで、楽しく生きてほしい。そうして僕をもっと好きになってほしい。僕だけを見てほしい。
――だから僕の言葉だけを聞いて、僕の言葉だけを信じてほしんだ。
最近の僕は、こんなことをずっと思っている。
「だって、タケルは本当に可愛いんだよ？ それに僕がどう思っているか、タケルには知っていてほしいんだ」
「……そうだとしても、そんなこと、普通、言わねぇだろ」
「そうかなぁ。僕は可愛いと思ったら言うし、好きだと思ったら言いたい。それに、言わないとわからないって言ったのはタケルのほうだよ？」
「それは、……そうだけど」
あぁ、首も耳もますます真っ赤になった。日に焼けた肌はこんがりしているのに、それでも真っ赤になったのがわかるなんて可愛くて仕方がない。きっと体も赤くなっているだろうし、それよりも真っ赤な胸の粒が食べたくなってきた。
こんなに可愛くておいしそうなタケルをお嫁さんにできて、僕は本当に幸せだ。これからもたくさん「好き」を伝えたいし、もっと「可愛い」も言いたい。そうしてたくさん契って、お互い蕩けて境目がわからなくなるくらいくっついていたい。僕と同じ寿命になったタケルとずっとずっと一緒にいたい。
「僕のお嫁さんはとても可愛いなぁ」
そう言って、そっぽを向いていたタケルの肩を引き寄せた。そうして近づいてきた唇にチュッと優しく触れる。
「ほら、キスした唇も可愛い」
肩を撫でて、そのまま背中を撫でてからお尻を撫でる。少し力を入れて揉んだらビクッと震えたのがわかった。
「お尻も感じやすくて可愛い」
慌てて体を起こしたタケルの胸に手を伸ばして、少し膨らんだ粒をシャツの上からピンと爪で弾く。今度は全身がビクンと跳ねた。
「こっちもプクッとしてて、可愛い」
タケルは潤んだ目で僕を睨んでいたけれど、それだって十分可愛いんだ。だからもう一度ギュウッと抱きしめて、耳元で「大好き」と囁いた。そうしたら、本当に小さい声だったけれど「……俺も」と返事が返ってきた。
――いまのは危なかった。
まさか、返事だけで出そうになったなんてタケルに知られたら大変だ。そんなに簡単に射精してしまうお婿さんなんて情けなさすぎる。それに、出すならタケルの中に全部出したい。
そんなことを考えながら、今度は長いキスをした。そうしてトロトロに溶かしたところで、二度目の契りを交わすんだ。
僕のお嫁さんは強気でちょっと乱暴なところもあるけれど、こんなに可愛いところがたくさんある。可愛くて大好きなお嫁さんを、僕は大事に大事に抱きしめた。
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