不思議な幼稚園

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不思議な幼稚園

 知っている様な並木道。けれど、全く知らない。バスに揺られること数分、か、それ以上。僕はずっと窓の外を見ていたので、バスの中にどれくらいの人がいたのかは分からない。分からないが、少なかった気がする。僕が降りるバス停で、数人が降りた。全員、同じ目的地へと歩いていく。二人組と、もう一人、知り合いなのか僕が話せる相手がいた。それと、全く知らない踊りながら同じ方向へ進むおかしな人。  彼らとともに進んでいくと、どうやら人気のない路地の中へと進んで行った。正直、僕はどこへ向かうのか、分かっていなかった。けれど、皆同じ目的で、同じ目的地へと進んでいると言うことだけは確信している様だった。  高めの塀と、その塀の上に更に網の柵が張られた空き地、その反対側は廃れた廃墟が立ち並んでいる。今回の夢は、少しだけ色がついたセピア調の景色だ。  行き止まりに差し掛かる。廃墟が並ぶ方は、そこから世界が変わるのかと言わんばかりに色というか、空間が変わっている様な感じがして不気味だった。例えるなら、炭が撒き散らされている様な地面と、燃えて黒ずんだ角だけが残った廃屋だけが残る、戦場跡地の様な、実際に見たことはないが、そんな景色。だが、空は黒く、光源はない様に見えたが、景色は見える。薄暗く、夕方のあの薄暗さのような暗さをしている。  行き止まりで僕の友人なのか、知り合いなのか、僕が親しげに話している少女が何やら作業を始める。黒い服に着替え始めたのだ。僕は訳が分からず、とりあえず少女がやることをじっと見て待っていた。着替えている間にあたりを見渡す。他にいた人で、二人組も同じ様に黒い服に着替えていた。踊りながら進んでいた変な人はそのまま先へ進んで行ってしまった。  少女が行こう、と言うので怯えつつも少女の真後ろについて先へ進む。  先は、煤だらけの様に黒くなっていて、垂直に梯子がかかっていたのでそれをゆっくりと降りていく。しかし、最後の四段くらいはかけていた。飛び降りなければならないらしい。僕はその時、呑気にどうやって帰るのだろうかと考えていた。  臆することなく先へ進んで行ってしまった少女を追いかける為に高所が苦手な僕は必死に梯子を掴み、そして最後の最後でジャンプをして着地。足が痺れたが特に痛みもなく、そのまま先へ。後ろを見ると、誰もいない。  誰もいない?  ……考えるだけ無駄なので、正面を向く。そこには、幼稚園があった。門も塀もない。空き地のような空間に、ポツンと建っている。外にあるだろう遊具もない。建物の中で子供たちが先生とわいわいとはしゃいでいるのが見える。しかしその全員が顔だけがぼやけている。  先ほど一緒にいたはずの彼らはどこへ行ったのだろう。  正直、怖さと、好奇心があった。  僕は何故か、幼稚園の中へ入った。  何か喋っていただろうか、先生らしき女性は僕に親しげに話しかけ、中へ通してくれた。  園児と遊ぶかと思いきや、園児は僕のことを見向きもしない。近づいてくることもない。  僕は窓の外を見た。  学生らしき人の行列が、幼稚園の外を回っていた。回っていた、という表現は合っていないかもしれない。正確には、二つの団体だろう行列が、逆方向に進んでいるのが見えた。どちらも二列の行列。一方は先ほど僕が来た方向へ。もう一方は幼稚園を通り過ぎて奥の方へ進んでいった。  ともにバスを乗っていた人は? ともに降りた彼らは?  僕はそこで目を覚ました。  目を覚ました瞬間、彼らのことは忘れてしまっていた。
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