約束だもんね?

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甲子園での応援をしたくて強豪校に入学した。 そして野球部のマネージャーになった私。 3年の夏は私にとっても最後のチャンスだ。 「おまえを甲子園に連れて行く!」 あの日、同級生の彼が私に誓ってくれた。 ふたりの1番最初の約束だ。 彼、克也は野球部のエースで四番。 そしてキャプテン。 私は密かに思いを寄せていた。 「もしも、甲子園行きが叶ったら……。 その時にはオレと付き合ってくれ」 そうも言った克也を、そしてチームを、私は全力で応援した。 甲子園に行きたかったから。 克也と付き合いたかったから。 結局チームは負けて、甲子園行きは叶わなかったけど。 それでも私たちは付き合うことになった。   あの夏から5年経った今、私たちは結婚した。 彼と私の「甲子園行き」の夢は叶えられなかった。 でも。自分たちの間にもし男の子か産まれたら……。 その子に託したい夢になった。 子どもに甲子園に連れて行ってもらうこと。 まだまだ遠い未来だけど、とっても楽しみな夢。 ******* 私の「甲子園行き」の夢。 それは思わぬ形で、予想以上に早く叶うことになった。 克也の弟、貴也のチームが甲子園行きを決めたのだ。 貴也が甲子園に連れて行ってくれる! 克也は仕事で行けないけど、私は甲子園に応援に行く。 とってもドキドキで楽しみだ。 そして。もうひとつドキドキしていることがある。 甲子園の予選前に貴也とふたりきりになった時に彼が言ったこと。 「もしもボクが甲子園に行けたなら……。 お義姉さん、ボクを男にしてください!」 義理の弟の突拍子もないお願いに驚いた。 もちろん真に受ける訳もなく、冗談だと思った。 まさか甲子園に行けるとも思ってもいなかったし。 「はいはい。本当に行けたらね」 と笑いながらその時は軽く受け流した。 「お義姉さん、絶対! 約束だからね!」 いつになく真剣な眼差しの貴也。 可愛いヤツだなぁ、なんて微笑ましくさえ思った。 その時は。 でも。貴也の甲子園行きが決まった。 直後から彼の様子か変だ。 最近、会う度にやたら視線を感じる。 そして克也が居ない隙をみて、意味深なことまで言ってくるようになった。 これって、貴也と私はイケナイ約束をしてしまったことになっている? 貴也がいつ行動を起こしてくるのか、会うたびにとってもドキドキしている。 たとえ貴也が「約束したよね」と言ってきたとしても、それには応じちゃいけないんだけど……。 もしもそうなってしまったら、抗いきれない未来の自分が見える。 だって。貴也、強引なんだもん。 それに。克也よりタイプだったりするんだもん。 克也にバレないように、一回くらいならいいかな? 克也は「甲子園に連れていく」というあの約束、守れなかったけど。 貴也は連れて行ってくれる。 私も約束は守らなくちゃ、だよね? 《 了 》
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